組織を超えたデータ交換やデータ取引やデータ共有は、様々な領域での期待がかかる一方、市場参加者が保有する情報の非対称性や、一部組織によるデータの寡占化、データの適正さの判断基準が曖昧といった課題が障壁となっている。
こうした中、一般社団法人データ社会推進協議会(以下、DSA)は、データを利用する権利を権利証書化し、取引きの対象とする「データ利用権取引」の実証実験を開始することを発表した。
データ利用権は、データの利用に関して認められた権利で、データ提供者が権利内容を定め、その権利はデータ利用権証の所有者に付与される。
データ利用権取引市場でデータ利用権証とともにデータセットの売買をすることで、信頼できる第三者機関(Trusted third party:以下、TTP)によりデータを利用する権利内容と取引の来歴が保証され、データ提供者・データ利用者双方にとって安全・安心なデータ取引を実現するものだ。
今回の実証では、株式流通市場における成行注文や指値注文の方式と同様の仕組みを導入するとともに、データ取引におけるデータの売り出し価格の決定に、ブックビルディング方式を取り入れるなど、データの売り手と買い手双方による適正な価格決定の仕組みを評価する。
これにより、データの価値と権利の顕在化をすることで、適切なデータ取引を支援する。
「データ利用権取引」は、2021年度にDSAがデジタル庁から受託した「DFFTを実現するためのデータ利⽤権取引市場の設計及び実証研究」で取りまとめた設計仕様に基づき構築されている。
これにより、データ利用に関わる権利の条件を標準化した「データ利用権証」と、対象データを組み合わせて取引する。
また、TTPがデータを利用する権利の保証と、取引関与者それぞれの真正性、データの完全性を保証することにより、安心・安全かつ効率的なデータ取引を支援する。
加えて「データ利用権証」を取引の対象とすることで、データ提供者は金融商品の先物取引のようにデータ収集前に売買を成立させ、事業資金の事前調達を行うことも可能になる。
なお、データを生成する組織が必ずしもデータ売買のノウハウを持つとは限らないことから、「データブローカー」という機関を設置し、データ売買を委託できる仕組みとしている。
また、データの値付けに参考値や基準がないことがデータ取引参入の障壁のひとつとして挙げられていることから、データの上場時に入札方式かブックビルディング方式を選択できることとしている。
実証では、データ提供者・データ利用者・データブローカーの各役割を担当する企業や組織を広く一般から募集し、具体的な業態、業務、データの提供・活用を想定して、データ利用権取引市場システムの機能を利用してもらい、「①利用権証の生成」「②上場」「③注文/約定(売買)」「④利用権の行使」といった一連の操作を体感したうえ、その操作性や活用可能性、課題抽出などの観点で検証する。
なお実証実験の参加者は、DSA会員企業・団体のほか、広く産官学民からも募っている。
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