IBMは、IBMの次世代量子アーキテクチャおよび量子プロセッサを、神戸市の理研計算科学研究センタに導入し、専有利用権を提供する計画について、理化学研究所(以下、理研)と合意したことを発表した。
なおこの合意は、経済産業省傘下の新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)がファンディングする「ポスト5G情報通信システム基盤強化研究開発事業」の「量子・スパコンの統合利用技術の開発」プロジェクトにおいて締結されたもので、理研は同プロジェクトの実施において、IBM Quantum System Twoを専有利用する。
このプロジェクトでは、理研と共同提案者のソフトバンク株式会社、理研の共同実施者の東京大学、大阪大学が、量子コンピュータとスパコンを連携するためのシステムソフトウェア、プラットフォームを構築し、ポスト5G時代で提供されるサービスとして展開する技術としての有効性を実証する。
また、同プロジェクトとは別に、IBMは、量子コンピュータとスーパーコンピュータの統合コンピューティング環境でのワークフロー実行のため、ミドルウェアや最適な量子回路を生成・実行するソフトウェアの開発を行う予定だ。
IBMは、今回の合意に基づき導入し「富岳」と連携する「IBM Quantum System Two」には、「量子を中心としたスーパーコンピューティング」という次世代の量子コンピューティング・アーキテクチャの導入を計画している。
これは、極低温インフラストラクチャやモジュール式の量子ビット制御機器、クラシック・サーバ、システムソフトウェアを組み合わせ、従来型のHPCサービスと並列する形で量子コンピューティング・サービスを提供するものだ。
「IBM Quantum System Two」には、新しい商用量子プロセッサ・シリーズの第1号となる、133量子ビットのIBM Quantum Heronプロセッサが搭載される予定だ。IBM Quantum Heronプロセッサは、IBM Quantumプロセッサの中でエラー率が最も低く、これまで最も高性能であったIBM Eagleプロセッサと比較して5倍の性能向上を実現したプロセッサで、現在はクラウド上で利用が可能とのことだ。
計算科学研究センター量子 HPC 連携プラットフォーム部門 部門長の佐藤三久博士氏は、「HPC(High Performance Computing)の観点から見ると、量子コンピュータは、従来スパコンで実行されてきた科学アプリケーションを高速化し、スパコンではまだ解くことのできない計算を可能にする装置だ。理研の科学の総合力と富岳をはじめとする最先端のスパコン開発及び運用の経験を生かして、量子・HPC 連携コンピューティングのためのシステムソフトウェアの開発に取り組んでいく。」と述べている。
また、IBMフェロー兼IBM Quantumバイス・プレジデントのジェイ・ガンベッタ氏は、「この取り組みにより、従来型のコンピューティング・リソースを使用して、量子計算と量子通信を組み合わせるモジュール式で柔軟なアーキテクチャーの推進に向けて業界を前進させ、両方のパラダイムが連携してますます複雑化する問題を解決できるようにする。」とコメントしている。
無料メルマガ会員に登録しませんか?
IoTに関する様々な情報を取材し、皆様にお届けいたします。