人間がモノを掴む微細運動スキルは、人間の認知において重要な役割を果たし、日常活動から高度な道具を使った文明の発展まで、あらゆることに影響を及ぼしている。それらのスキルを客観的に定量化し評価することは、これまで大きな課題となっていた。
ビデオコーディングなどの従来の方法は効果的だが、時間がかかり、コーディングする人のバイアスの影響を受けやすい。また、モーションキャプチャーや手に装着する計測デバイスのような既存の技術には制限があり、特に乳幼児の指の動きを評価する際には限界があった。
そこで芝浦工業大学のシステム理工学部生命科学科・佐藤大樹教授らの研究チームは、柔軟な触覚センサを活用し、手指の微細な動きを客観的に評価するシステムを開発した。
具体的には、非侵襲的な生体断層イメージング技術の一種である電気インピーダンス・トモグラフィを活用したトモグラフィ型触覚センサを用いたアプローチを開発し、極めて高い精度で動作を識別することを示した。
同システムで使用する触覚センサは、4つの層から構成されており、柔軟性、形状の汎用性、感度の点で従来の方法に比べて優れているのだという
センサは16個の電極を備えたフレキシブルプリント回路基板と導電性材料を使用し、さまざまな指の動きから電圧データを取得することができる。
データは数値解析ソフトウェアを使って処理され、接触分布画像を再構成した。新しいシステムは、円筒形の形状を利用しており、この機構により、つまむ動作の正確な測定が可能になっている。
今回の研究では、12人の計測参加者(成人)が、指の本数と方向によって特徴付けられる6種類のつまむ動作を行い、計測した電圧信号と再構成画像を用いて6種類のつまむ動作を分類した。その結果、再構成画像を用いた場合の分類精度は79.1%、電圧信号を用いた場合の分類精度は91.4%であった。
今後は、触覚センサをさまざまな形状の物体に適用することで、手指運動を促す知育玩具の開発からなどに活用されることを目指す。また、手の動きの自動解析は、発達医学研究における人手不足を解消し、将来的にはオンライン医療の実現にも貢献できる可能性があるとしている。
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