株式会社東芝は、物体の動きや位置を検出する慣性計測装置に活用する慣性センサーにおいて、小型化と高精度を両立した「慣性センサーモジュール」の開発に成功した。
慣性センサーは、物体の動きや姿勢を検出するためのセンサーで、代表的なものとして物体の回転や向きの変化を検出する「ジャイロセンサー」と、物体の速度の変化を検出する「加速度センサー」がある。センサーは物体そのものに搭載することから、GPS等の電波が届かない場所や、暗くてカメラで対応できない場所でも物体の動きや姿勢を正確に検出することができるのが特徴だ。
今回東芝が開発した慣性センサーモジュールは、独自のMEMS(Micro Electro Mechanical Systems)技術を活用し小型化しつつ、ジャイロセンサーは0.01dph以下、加速度センサーは1µG以下のバイアス安定性を実現した。
また、東芝電波プロダクツ株式会社は、今回東芝が開発した「ジャイロセンサー」のモジュールを用いて、持ち運び可能なサイズのジャイロコンパスを開発した。
一般的な方位磁石が地球の磁場を利用して北を指すのに対して、ジャイロコンパスは地球の自転を基にして真北を指す。磁気の影響を受けないという特徴があり、船舶や航空機などに使用されている。
今回開発されたジャイロコンパスは、可搬サイズかつ0.056°の方位角精度で真北を推定することに成功した。
なお、0.056°の方位角精度は、極めて高い正確性が求められる防衛分野でレーダーなどの設置方向を決める際にも用いることができる精度であり、防衛以外の分野でも、土木工事における正確な測量、地中の掘削における精密な方角推定などの場面での活用が見込めるとしている。
両社は、これらの技術の詳細を、2024年9月1日~4日にハンガリーで開催される欧州学会「EUROSENSORS XXXVI」にて発表する予定だ。
今後東芝は、搭載物の軽さが重視される飛翔体や空中ドローンなどに対しても、飛行に影響を与えることなく搭載できる10cc級の超小型サイズ(ペットボトルキャップの大きさ)の慣性センサーモジュールの実現に向け、さらなる小型化を目指し研究開発を進める計画だ。
また、東芝電波プロダクツは、今回開発したジャイロコンパスについて、2026年度以降の製品化を目指すとしている。
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