日本電信電話株式会社(以下、NTT)は、同社が提唱する、大容量光伝送基盤の実現を目指すIOWN構想の一環として、マルチコア光ファイバ(以下、MCF)の研究開発を進行中だ。
これまでNTTは、現行の光ファイバと同じ細さのガラス中に、4つの光の通り道を多重化した4コアMCFの研究開発を推進してきた。しかし、4コアMCF光伝送路を商用化する際の課題として、オンサイトで使用可能な建設・保守・運用技術の確立が挙げられていた。
そこでNTTは、1本の通信用光ファイバで現在の光ファイバの4倍の大容量化を可能とする4コアMCF光伝送路の商用導入に必要な、オンサイトでの建設・保守・運用技術をラインナップ化した。
この成果により、光ファイバ心線数の需要が増大しているデータセンタ間光通信や、光ケーブル内の光ファイバ実装空間に制約がある海底光伝送区間で、4コアMCF光伝送路の実用化が加速すると見込まれている。
具体的には、4コアMCFの設計、光ケーブルへの実装に加え、オンサイトでの建設・保守・運用を可能とする接続・分岐技術、そしてそれらを用いたケーブル接続・分岐技術、局内のMCF収容・配線技術をラインナップ化した。
さらに、現在の光ファイバと同じ細さで4つのコアを多重化したMCF技術と、直径約20mmの中に最大8,000コア(4コアMCF2,000心)までを実装可能とする細径高密度光ケーブル技術に加え、MCFの接続・分岐に関する2つの要素技術も確立した。
加えて、上述の接続・合分岐技術を活用し、地下管路内および局内における光伝送路の要素技術を確立した。
こうした成果は、使用光ファイバ心線数が指数関数的に増大しているデータセンタネットワークや、実装可能な光ファイバ心線数に空間制限がある海底光ケーブルへの適用が期待されている。
データセンタネットワークでは数千本の光ファイバを実装した光ケーブルに対する需要が顕在化しているが、実装光ファイバ数の増大とともに光ケーブルの直径も拡大傾向にあり、例えば、地下管路では敷設可能なケーブル直径の上限に迫りつつある。
また、海底光ケーブルに実装可能な光ファイバの本数は数十本が限界で、最新の光海底システムでは既に収容可能な光ファイバ心線数の上限に達している。
このような領域に4コアMCFを適用することで、陸上システムの心線需要、並びに海底システムの大容量化需要に柔軟に対応することが可能になるという。
今後NTTは、2027年頃を目指して、4コア光伝送路技術の実用展開および国際標準化の推進を進める予定だ。
また、この研究成果の一部は、2024年11月25日から29日まで開催される「NTT R&D FORUM 2024」で展示されるとのことだ。
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