昨今、災害時を見据えた構成のシステム導入が進んでいるが、システム構築や維持にかかるコスト増加や、災害時における業務継続のためのオペレーション、復旧までの作業時間などの課題がある。
さらに、最近の生成AIの普及により、データ処理量が増加し、データセンタの需要が拡大する一方で、電力使用量の増大が地球環境へ負荷をかけている。
こうした中、株式会社日立製作所(以下、日立)とNTTコミュニケーションズ株式会社(以下、NTT Com)は、日立ヴァンタラ株式会社の「Hitachi Virtual Storage Platform One Block」(以下、VSP One Block)と、NTTが打ち出すIOWN構想の主要技術である「IOWN APN」を用いた共同実証を実施した。
「VSP One Block」は、ストレージ仮想化技術を用いて、各拠点に設置された複数のストレージをあたかも1つのストレージのように管理・運用できるデータストレージだ。これにより、災害発生時の事業継続に強みを発揮する。
一方「IOWN APN」は、ネットワークから端末まで、すべてにフォトニクス(光)ベースの技術を導入するというものだ。これにより、現在の電子ベースの技術では困難な、低消費電力、高品質・大容量、低遅延の伝送を実現する。
今回、「VSP One Block」と「IOWN APN」を用いることで、長距離間のデータ同期における往復応答時間を、日立が推奨するネットワークの応答時間以内に収めることに成功した。また、災害発生時にもシームレスにシステム復旧が可能であることを確認した。
今回の実証で行われたのは、2つの検証と評価だ。
一つ目は、「VSP One Block」を「IOWN APN」で接続し、東京・大阪間といった600km離れた環境を仮想的に作り、日立のストレージ仮想化技術「GAD」におけるデータ同期に要する時間を測定した。
回線の応答遅延を改善した結果、IOWN APNの持つ低遅延、低ジッタ(遅延時間の変動が小さい)により、日立が推奨するネットワークの往復応答時間を下回る結果となった。これにより、600kmの長距離でもデータ常時同期での環境構築ができるという実用性を確認した。
二つ目は、災害発生時のシステム復旧時間の検証だ。同一データセンタ内で利用されるクラスタ技術を用いてデータセンタ間で冗長化を行い、データセンタのメインサイトで疑似障害を発生させることで、サブサイトにおいて業務継続が可能かを検証した。
その結果、メインサイトがシステムダウンした後、データ損失なく、自動的にサブサイトでのシステム稼働が確認された。
この検証結果を適用することにより、
これまでは、メインサイトからサブサイトへの切り替えや、災害発生時のデータ損失に対するリカバリー作業といったシステム復旧作業が必要だったが、今回の検証結果を適用することにより、これらのSEの稼働が不要になる。
さらに、従来の非同期に複数のデータを保持しバックアップを取得していた場合と比較し、ストレージ容量を削減することができる。
これらの検証結果により、離れたデータセンタ間をリアルタイムに連携させることで、企業がひとつのデータセンターのように利用することが可能になる。
また、長距離間のデータセンタをつなぐことができれば、土地や再生可能エネルギーの確保がしやすい地域にデータセンタを分散配置し、都市部でのデータセンタの一極集中を回避することができるようになる。
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