東京大学ら研究グループ、材料科学分野における全国規模のデータプラットフォームを開発

現代の材料研究手法は高度化しており、実験的手法と理論的手法を組み合わせることが不可欠だ。

実験的手法では、電子顕微鏡や大型放射光施設などの最先端実験装置を駆使し、実際の材料の構造や特性を直接観察・測定する。また、高度な加工装置によってデバイスを作製する。

理論的手法では、スーパーコンピュータを活用し、大規模な計算を行うことで、材料の複雑な構造予測や物性・プロセス条件の分析を行う。

実験的アプローチと理論的アプローチを組み合わせることで、背後に隠れた物理現象の理解や新材料の開発を促す。

これまでは、材料研究における科学データの収集は、個別の分野や研究グループで独立には進んでいたものの、幅広い材料研究者が大規模データを収集・管理可能なデータプラットフォームは未整備でした。その結果、多くの研究グループにおいて、データは個々の実験施設やスーパーコンピュータ、個人のPCに分散して保存され、研究メンバーの増加やデータ量の肥大化に伴うデータ管理のコストが問題となっていた。

そこで、東京大学情報基盤センター、同大学大学院工学系研究科、日本原子力研究開発機構、広島大学、理化学研究所、情報・システム研究機構 統計数理研究所のメンバーからなる研究グループは、材料科学分野における全国規模のデータプラットフォーム「ARIM-mdx Data System」を開発した。

このシステムは、文部科学省が推進する産学官の全ての研究開発者に技術やノウハウを共用提供するプロジェクト「マテリアル先端リサーチインフラ(ARIM Japan)」の一環として整備された。高性能な計算機と大容量のストレージを備え、SINET6の高速ネットワークと連携してデータを収集・集積・解析できる「データ活用社会創成プラットフォーム mdx」の上に構築されている。

これにより、全国の大型実験施設とスーパーコンピュータからの研究データを「ARIM-mdx Data System」に集約し、一元管理できるようになった。実験施設、スーパーコンピュータ、「ARIM-mdx Data System」間は、学術ネットワークSINET6で接続され、超高速データ転送が実現されている。

また、研究施設の実験装置からIoTデバイスを使って、データを自動的に転送・保存し、実験中の即時データ解析が可能だ。

これにより、実験・計算分野の研究者に共通のプラットフォームを提供できるほか、大学・企業の研究者が同じプラットフォームでデータを活用することができ、組織や分野の枠を超えた共同研究を促進する。

研究論文の主著者である東京大学情報基盤センターの華井雅俊特任助教は、「本システムの利用拡大により、新材料開発の効率化や、データ駆動型の材料研究が促進されることを期待しています。特に、AI・機械学習を活用した材料探索や、実験と理論の密接な連携による新しい研究手法の確立を支援することを目指していきたいと思います。今後、北海道大学、電気通信大学、産業技術総合研究所、名古屋大学、広島大学、日本原子力研究開発機構 SPring-8、九州大学の大型実験施設などへの導入拡大を予定している」と述べている。

なお、今回の研究成果は、2024年12月15日から18日に、米国ワシントンDCにて開催されるビッグデータに関する国際会議「IEEE BigData 2024」にて発表されるとのことだ。

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