STマイクロエレクトロニクス(以下、ST)は、遠隔地でのIoT機器の展開を簡略化する、低消費電力技術を使った汎用32bitマイクロコントローラ「STM32U3」を発表した。
同製品は、コイン電池や太陽光および熱電供給源などの環境発電を使用し、低消費電力を実現したマイコンだ。省電力チップ設計とAIツールによる微調整、最大96MHzで動作する最新のArm Cortex-M33コアにより、低消費電力を実現している。
電力効率は、ベンチマークにおいて117というスコアを達成しているとのことだ。これは、従来のSTM32U5シリーズの約2倍、STM32L4シリーズの5倍の効率に相当するという。
また、コンピュータのチップが動作するときに電圧をできるだけ低くする技術であるニアスレッショルド技術を活用することで、ICトランジスタをきわめて低い電圧で動作させ、2乗則に比例してエネルギーを節約する。
なお、ニアスレッショルドの実装には、AIを用いた適応型電圧スケーリングをウェーハ・レベルで使用することで、製造工程でのプロセスのばらつきを補正する。
セキュリティに関しては、前モデルのSTM32U5シリーズのすべてのセキュリティ機能を引き継いでいるほか、新たに「キーストア機能」を追加した。これにより、秘密鍵を安全に管理できるようになり、外部からの不正アクセスや情報漏洩のリスクを低減する。
なお、秘密鍵は、工場出荷時にSTが直接チップに埋め込むため、ユーザが手動で設定する必要はないとのことだ。
さらに、「STM32U3」は「カップリング・チェイニング・ブリッジ(CCB)」という新しい技術を使用しており、これによって秘密鍵が物理的およびソフトウェア的に守られる。
この技術により、万が一チップが不正に解析されても、秘密鍵が簡単には取り出せないようになっている。
加えて、ハードウェアレベルでの暗号化アクセラレータや、TrustZoneアイソレーション、乱数生成器を搭載しているため、サイバー攻撃に対して強い耐性を持っている。
なお「STM32U3」には、2つの製品ラインがあり、ハードウェア暗号化アクセラレータを搭載するマイコン、もしくは搭載しないマイコンを選択することが可能だ。
利用シーンとしては、保守作業なしで長期間の動作が求められるIoT機器で、インフラのメータ、医療機器、動物のケアモニタ、森林火災センサ、産業用センサなどが挙げられている。
また、スマート・ウォッチ、ウェアラブル機器、ヒアラブル機器などのコンスーマ機器にも適しているとのことだ。
STの汎用マイクロコントローラ事業部ジェネラル・マネージャーであるPatrick Aidoune氏は、「この新製品は、ニアスレッショルド電流設計における最近の進歩など、革新的な技術の活用により、動作時電流消費電力を最小限に抑えることで、効率を前世代製品の2倍に高めて、企業のサステナブルな目標達成に貢献する。」と述べている。
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