半導体メーカーのSTマイクロエレクトロニクス(以下、ST)は、FlightSense技術を採用した第3世代のToF(Time-of-Flight)測距センサ「VL53L1」を発表した。
VL53L1は、STが新たに特許を取得したシリコン・レベルおよびモジュール・レベルのアーキテクチャを採用すると共に、光学レンズを搭載している。これらの技術の組み合わせは、性能を向上させ、さまざまな新機能(マルチターゲット検出、長距離測定時のカバーガラスによるクロストーク耐性、設定可能なマルチゾーン・スキャンなど)を実現する。これらの先進性は、ロボット、人体検出システム、ドローン、IoT機器およびウェアラブル機器に、新たな付加価値となるセンシング性能を提供する。
4.9 x 2.5 x 1.56mmのセンサ・モジュールの中には、新しいレンズ・システム、940nm VCSEL(※1) 不可視光光源、プロセッサ・コア、SPAD(※2) 光子検出器が統合されている。光学レンズを追加することにより、光子検出率が増加し、モジュールの測距性能が向上する。また、内蔵マイクロコントローラが、測距機能を制御すると共に、デジタル・アルゴリズムを実行するため、ホスト処理によるオーバーヘッドとシステムの消費電力が最小化され、バッテリの長寿命化に貢献。
STのイメージング事業部ジェネラル・マネージャであるEric Aussedatは、次のようにコメントしている。「STのToFセンサは既に数億個が出荷されており、70機種以上のスマートフォンや、その他の多くのコンスーマ機器に採用されています。FlightSense技術を採用したこの第3世代のセンサは、人体検出などの新しいアプリケーションに対応する最新機能を搭載する一方、既存用途に対する継続的なセンサ性能の向上も実現しています。」
新しいVL53L1は、わずか5ms(※3) で距離を測定するため、高速動作するアプリケーションに適しているという。スマートフォンのオートフォーカス機能に使用する場合、従来品の2倍の速度で物体を検知。さらに、最大測定距離が4.5m以上に倍増しているため、幅広く利用されている21Mピクセルの光学カメラの過焦点距離に対応している。
VL53L1は、高性能な設計アーキテクチャの採用により、シーン内にある複数のターゲットの検知が可能で、SPADセンサ・マトリクスを任意のゾーンに分割して使用することもできる。このように小さなゾーンに分割することで得られる空間的な測距情報は、システム側でデュアル・カメラによる3D画像処理や深度マップに活用することができる。
その他の測距センサに使用されている技術と異なり、STが新たに特許を取得したアルゴリズムとダイレクトToFアーキテクチャは、長距離測定におけるクロストークに影響されないため、これまで以上に幅広いカバーガラスの材質とデザインに対応する。
I2Cに対応するVL53L1には、ソフトウェア・ドライバとドキュメントの完全なパッケージが付属しており、迅速かつ簡単な統合が可能だという。VL53L1は現在量産中。
※1 Vertical Cavity Surface-Emitting Laser:垂直共振器面発光レーザー
※2 Single-Photon Avalanche Diode:単一光子アバランシェ・ダイオード
※3 ミツバチの羽ばたき1回にかかる時間が5ms(出典: Wikipedia)
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・STマイクロエレクトロニクス(ST)
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