KDDI株式会社は、新潟県長岡市の協力のもと、4G LTEのモバイル通信ネットワークを活用し、「3次元地図」、「ドローンポート」を用いた「スマートドローン」の完全自律飛行実験を実施した。
実験の結果、離陸地点から、自動充電可能な「ドローンポート」を経由し、錦鯉を養殖する棚池での薬剤散布後に着陸地点に帰還するまでの総距離約6.3kmの長距離飛行を実現した。
KDDIは、モバイル通信ネットワークを活用したスマートドローンによる安全な長距離自律飛行が可能となるインフラの構築を目指している。
同実証実験は、そのために必要な「3次元地図」による安全な飛行高度の設定と、「ドローンポート」による自動充電に関する実験であり、これらを活用することで、ドローンの長距離自律飛行が技術的に可能であることを確認した。
同実証実験で用いた「3次元地図」は、モバイル通信ネットワークを活用した安全なドローン飛行を実現する「スマートドローンプラットフォーム」の開発について業務提携した、株式会社ゼンリン、株式会社テラドローンと共同で開発した。
ドローンの自律飛行に「3次元地図」を用いることで、安全な飛行高度を自動設定。山や丘など地形の高度差や、ビルなどの障害物を把握可能とし、今回の実験では100m以上の高低差の自動判別を可能にした。
また、同実証実験で用いた「ドローンポート」は、株式会社プロドローンが開発した画像認識による自動着陸機能により、目的の場所に正確に着陸し、自動充電を開始。これにより、ドローンポートを介しての長距離飛行が可能になる。
同実証実験を行った新潟県長岡市山古志は、錦鯉発祥の地であり日本有数の錦鯉養鯉地。こまめな給餌や寄生虫除去のための薬剤散布、いけすの管理や保守など手間がかかるという。
特に、美しく大きな錦鯉を育成するために欠かせない寄生虫除去の薬剤散布は、棚池をボートで満遍なく移動しながら散布するため、時間と労力がかかるという課題があるのだという。
モバイル通信ネットワークと「3次元地図」を用いた長距離自律飛行が可能なスマートドローンにより、散布場所を設定するだけで、高度を自動設定し、効率的な農薬散布を行うことができる。
今後、モバイル通信ネットワークを活用したスマートドローンの長距離自律飛行インフラが整理されれば、農地監視や農薬散布などの農業分野だけではなく、地形や設備の測量、施設の警備、災害状況の把握、遠隔地への配送など、さまざまな分野での活用が期待される。
【関連リンク】
・ケイディーディーアイ(KDDI)
・ゼンリン(ZENRIN)
・テラドローン(Terra Drone)
・プロドローン(PRODRONE)
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技術・科学系ライター。修士(応用化学)。石油メーカー勤務を経て、2017年よりライターとして活動。科学雑誌などにも寄稿している。