あらゆる産業において、新たなデジタル技術を活用して新しいビジネス・モデルを創出し、柔軟に改変できる状態を実現することが求められている。しかし、何を如何になすべきかの見極めに苦労するとともに、複雑化・老朽化・ブラックボックス化した既存システムも足かせとなっている。
レガシーシステムと呼ばれる、複雑化・老朽化・ブラックボックス化した既存システムが残存した場合、2025年までに予想されるIT人材の引退やサポート終了等によるリスクの高まり等に伴う経済損失は、2025年以降、最大12兆円/年(現在の約3倍)にのぼる可能性がある。
この場合、ユーザ企業は、爆発的に増加するデータを活用しきれずにDX(デジタルトランスフォーメーション)を実現できず、デジタル競争の敗者となる恐れがある。また、ITシステムの運用・保守の担い手が不在になり、多くの技術的負債を抱えるとともに、業務基盤そのものの維持・継承が困難になる。サイバーセキュリティや事故・災害によるシステムトラブルやデータ滅失・流出等のリスクも高まることが予想される。
DXを進めていく上ではオープン化・相互運用化が拡大していくため、特に重要インフラ企業におけるシステム刷新については、莫大なコストと時間がかかることや、再レガシー化してしまう恐れがあるなど、リスクが大規模に広がることのないように十分な配慮の上で計画的に進める必要があり、政策的な措置が求められる。
他方、ベンダー企業は、既存システムの運用・保守にリソースを割かざるを得ず、成長領域であり主戦場となっているクラウドベースのサービス開発・提供を攻めあぐねる状態になる。一方、レガシーシステムサポートの継続に伴う人月商売の多重下請構造から脱却できないと予想される。
情報資産とその問題点に対する全体像の把握
根本的なコストや時間といったリスクを評価する以前に、自社の情報資産を正確に把握できていないため、どこに課題があり、どのように構築していけばよいか判断がつかないことが挙げられる。
さらに、老朽化・複雑化・ブラックボックス化した既存システムを放置した場合、データを最大限活用できるようなDXが実現できず、また、将来にわたり運用・保守費が高騰して、多くの技術的負債を抱えることにもなる。
しかし、こうした経営上の重要な問題点について、 経営者が適切に認識できているとは言えない現状にある。情報システム部門が、仮にそうした問題を認識できているとしても、経営者に対して経営上の問題として説明するのが難しいとの指摘がある。
(出典:経済産業省 DXレポート ~ITシステム「2025年の崖」克服とDXの本格的な展開~)
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