現在、多くのヘルスケアサービスが民間企業により提供されており、特にパーソナルヘルスレコード(以下、PHR)(※)分野では日々膨大なデータが生み出されている。また、行政でも健康寿命の延伸に向けて、バイタル・運動情報を取得するスマートウォッチや、特定疾患の治療、栄養管理を行うスマートフォンアプリなどPHRの活用を促進させる仕組みが検討されている。
これら個人のヘルスケアデータ収集・管理には進展が見られるものの、それぞれのデータは分散して管理され点在している状況である。そのため、個人は元より国や医療機関にとっても価値ある重要なデータであるにもかかわらず、データの統合・分析や、それらのデータを元にした総合的な判断が難しいといった課題がある。
TIS株式会社と日本マイクロソフト株式会社は、ヘルスケア業界のDX推進に向けて連携することを発表した。両社は、PHR分野においてヘルスケア情報の取り扱いで要求される各種ガイドラインに準拠したクラウドベースの技術を「ヘルスケア リファレンス アーキテクチャー」を含む下記をパートナー企業に提供することで、システムやデータの最適化、イノベーションの加速を支援する。
「ヘルスケア リファレンス アーキテクチャー」の提供
行政や臨床学会が求める標準化ガイドラインを参照したPHR分野におけるヘルスケア リファレンス アーキテクチャーは、マイクロソフトのクラウドプラットフォーム「Microsoft Azure」を利用したヘルスケアサービス開発に必要となるシステム共有部分を定型化したもので、以下の特長がある。なお、GitHub上で公開されており無償で利用可能だ。
- ヘルスケア業界向けサービス提供者にとっての特長
- ヘルスケア業界にとっての特長
PHRで求められるセキュアで統一された基準でのシステム構築を可能であるほか、システム構築期間を短縮し運用及び開発コストの削減を実現する。また、臨床関連の6学会による「生活習慣病コア項目セット集(第2版)」および「生活習慣病自己管理項目セット集(第2版)」と、経済産業省の「健康情報等交換規約定義書」を参照したサンプルプログラムの利用が可能である。
ヘルスケア業界向けにサービスを提供する企業へのヘルスケア リファレンス アーキテクチャの提供を通して、PHRの標準化を推進し、相互運用性を向上、データの有効活用を促進する。
「ヘルスケア リファレンス アーキテクチャー技術者育成プログラム」の開始
同プログラムは、ヘルスケア リファレンス アーキテクチャーを理解し、技術活用できる技術者の育成を目的として、国際標準規格でもあるHL7 FHIRの情報提供、AIやIoTをはじめとするテクノロジを活用したシステム構築や実装に至る、総合的なトレーニングを提供する。TISは、同プログラムに向けたトレーニングコンテンツの開発に協力する。
社会的課題解決に向けたヘルスケア エコシステムの活性化
今回、両社はヘルスケア リファレンス アーキテクチャーの提供を通じ、ヘルスケア業界向けにサービスを提供する顧客のPoC(概念実証)や、PoCをきっかけとした事業化に数多く携わる事で、PHR取扱の標準化への貢献を目指す。また、この活動を通じて蓄積したノウハウから、さらなるリファレンス アーキテクチャーの拡充と普及、PHR取扱の標準化を進め、健康寿命延伸という社会的課題に向けたヘルスケア エコシステムの活性化に貢献する。
※ PHR:個人の健康・医療・介護に関する情報を、健康と医療の質の向上を目的に一元的に保存する仕組み。
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