若手設計者をアシストする5つの新機能

また、今回のフルリニューアルでは、新たに5つの機能が追加された(上の図)。まず、「部品リスト自動作成/一括見積もり機能」では、SOLIDWORKS上に構成した装置(アセンブリ)の部品リストをワンクリックで自動生成することが可能。また、その部品リストは一括で自動見積もりすることもできる。

「設計事例集」では、利用シーンを想定したさまざまな装置アセンブリの事例が用意されており、それぞれまるごとダウンロードすることが可能だ。ただし、事例集は部品数が多いため、テンプレートというよりは事例として参考にするために提供されている。
それに対し、もう一つの新機能である「部品組合せテンプレート」では、よく用いられる部品の組み合わせがテンプレートとして用意されている(部品数は平均で4~5個、多くて10個)。事例集に含まれる個々の要素をテンプレートとして切り出しているのだ。
インポートしたテンプレートはRAPiD Designで必要な仕様に変更して利用することが可能。なお、この事例集とテンプレートは、ミスミがこれまで蓄積してきたものづくりのノウハウや経験をもとにつくられている。

これらの新機能はたんに便利なだけではなく、習熟度がまださほど高くない若手エンジニアを「アシスト」する役割としても期待される。「RAPiD Designの反響が最も大きいのは、実は中国です。若手の設計者が多い中国では、おそらくRAPiD Designのような設計のアシスト機能のニーズが高いのだと思います」(中川氏)。
また、RAPiD DesignにはAI(機械学習)を使ったレコメンド機能も搭載されている。顧客の利用データをAIが学習することで、「部品Aを使うときはだいたい部品Bも一緒に使っている」といった予測に基づいて最適な部品を推奨するしくみだ。
熟練者のノウハウや「痒いところに手が届く」機能をデジタルサービスに組みこむということは、どの分野のDXでも課題であり、多くの企業がもがき苦しんでいるのが現状だ。しかしミスミはmeviyに続きRAPiD Designまで、いとも「自然に」実現しているようにみえる。秘訣はどこにあるのだろうか。
「もちろん簡単ではなく、社内では人知れずたくさんの苦労があります。一方で、弊社はものづくり企業であり、実際に生産技術の現場をもっていることがDXにおける強みの一つではないかと思います。また、弊社には新しい取り組みにチャレンジすることが好きな人たちが集まっていることもあり、DXの取り組みについても現場はとても積極的です」(中川氏)
RAPiD Designの進化はこれからも続く。今後は対応メーカーを25社から順次拡充していくことを計画しているという。また最後に中川氏は、今後の展望について次のように語った。
「製造業のデジタルツインを構築する上で、3DCADを用いた設計は欠かせません。その中でもRAPiD Designの特徴は、CADデータの入手から設計、見積もりまでのプロセスを包括していることです。つまり、エンジニアリングチェーンとサプライチェーンを統合する役割を担うのが、RAPiD Designです。今後はより広くメーカー様にデータ提供をいただきながら、設計者の皆様が創造的なものづくりに専念できるような環境の構築を進めていきたいと思います」
※3 「RAPiD Design」のチュートリアル一覧はこちら。
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技術・科学系ライター。修士(応用化学)。石油メーカー勤務を経て、2017年よりライターとして活動。科学雑誌などにも寄稿している。