株式会社NTTデータ イントラマートと一般社団法人日本OMGは、OMGの認定資格である「OCEB2」に関する協業を発表した。
協業の狙いと認定試験の目的について、NTTデータ イントラマート代表取締役社長である中山義人氏(トップ画像左)と、日本OMGの代表理事である吉野晃生氏(トップ画像右)にお話を伺った(聞き手:IoTNEWS代表 小泉耕二)。
業務分析の方法論をグローバルスタンダードに合わせる
IoTNEWS 小泉耕二(以下、小泉): はじめに、NTTデータ イントラマートの中山さんからお話を伺いたいと思います。これまでのNTTデータ イントラマートの取り組みと、協業を決めた背景を教えて下さい。NTTデータ イントラマート 中山義人氏(以下、中山): NTTデータ イントラマートは、2000年からワークフローの事業をスタートし、現在では、13年連続でNo.1のマーケットシェアを取っています。
しかし、ワークフローというものは、勤怠管理や旅費精算などに利用されることが多く、業務全体に対して見ると一部に過ぎません。そこで6年前から業務プロセス全体の最適化や可視化を行うためのビジネスプロセスマネジメント(以下、BPM)ツールで市場訴求を始めました。
それまでの企業の全体最適と言うと、ERPパッケージを導入し改善を行うという方法が主流でした。しかし、ERPパッケージの場合、利用する企業がERPパッケージの業務プロセスに合わせる必要があります。また、ERPパッケージは経営企画に関するものが多く、製造や発注といったような現場で利用されるシステムは個別に存在し、局所最適されていました。
近年、DXの動きが加速していることで、ビジネス全体をデジタルの力で再構築する必要が出てきています。更に、新型コロナウイルス感染症の影響でデジタル化をすすめる動きは加速しています。
ERPパッケージではカバーしきれない、現場までを含む業務プロセス全体を最適化するためには、業種業態ごとのノウハウや課題というものを考慮する必要があり、ワークフローの適応範囲のように平準化されていない領域があります。
弊社が提供しているBPMツールを利用することで、利用企業の複雑で個別な業務を可視化することができますが、そのためには、業務分析を行い業務フロー図を書き起こす必要があります。業務フロー図が作成できると、問題があるフローに対してツールを活用し業務全体を自動化していくことができます。
しかし、このツールを使う前の段階、つまり業務分析を行い業務フロー図を書き起こすという部分に時間と労力がかかります。特に、日本企業は企業固有のプロセスが存在していたり、責任の所在が曖昧なため何度も合議が入ったりなど、欧米と比べると業務プロセスが複雑です。
弊社はこれまでも、試行錯誤をしながら導入のための方法論を検討し、SIerを中心としたパートナー企業と連携しながらBPMツールの導入を勧めてきました。その中で、OMGが長年策定しているBPMに関する認定資格であるOCEB2と連携することで、これまで進めていた教育や方法論をグローバルスタンダードに合わせることができると考えました。
OCEB2と連携することにより、受講者は、弊社の持つBPMツールの導入方法論を習得することで、OCEB2の試験対策にもなり、そこで学んだ知識がグローバルでも通用する知識であると言えるようになります。
弊社としては、これまで試行錯誤していた様々な業界の方法論をグローバルスタンダードに合わせることが可能になります。
小泉: OCEB2の資格受講者が増えることで、各企業で業務分析を行い業務フロー図を書くことができる人が増えそうです。NTTデータ イントラマートの業務に関してはどのような影響が出ると考えていますか。
中山: 仕事のチャンスが増えるのではないかと考えています。
複雑なものを可視化していくということを出来る人が増えることで、その後実際に最適化するという動きが増えるでしょう。弊社はその最適化を実現するためのパッケージソリューションを生業としているため、その間口を広げることができます。
今まで、複雑だったものを可視化するということは、日本の場合SIベンダーが担当することが多かったです。しかし、DXの流れが加速し、対象領域が業務全体になってくると、その企業の現用部門が対応する必要が出てきます。これまでの業務システムと異なり、業務分析を行う場合は、状況に応じて何度も改善する必要があります。
業務に一番詳しい現用部門が、自ら取り組むために、大手企業ではDX推進部といったようなDXと付いた部署が主導するケースが出てきています。しかし、その人達がどう進んだら良いのかだったり、DXの人材をどのように育成したら良いのかだったりという指針がこれまではありませんでした。
今回の講座を受講することで、DXに取り組む企業が自社で可視化をできるようになります。これにより、日本のDXを推進するための底力になればと考えています。
日本でのBPM活用のスピード感を再構築する
小泉: 吉野さんにも日本OMGの視点から見た今回の協業の背景についてお伺いしたいです。日本OMG代表理事 吉野晃生氏(以下、吉野): 日本は物事を構造的に整理して、再利用できる形にするというアーキテクチャの考えが弱いと思います。
BPMについても、初歩的な部分を超えたところで、ITアーキテクトを目指すのか、それともビジネスアーキテクトを目指すのかという2つのステップに分かれます。
ITアーキテクトとは、企業の戦略に合わせてシステムの構造を設計する職種です。日本は、これまでITアーキテクトが中心でしたが、現在のDXの流れが加速しているような状況において、ビジネスアーキテクトを育てていく必要があります。欧米には、ビジネスアーキテクトという職種があり、先程の中山さんの説明にあったように、企業の中で複雑なものを紐解いて可視化していくことをしています。
そうした背景がある中で、日本の中でBPMのノウハウと顧客基盤が一番あるであろうNTTデータ イントラマートと協業し、日本におけるBPM活用のスピード感を再構築したいと考えています。NTTデータ イントラマートとこれまで関係のあった企業には、改めてBPMとは何かということを説明する必要がありません。そのため、日本に対する支援が効率的に進むと考えています。
OCEB2認定試験の内容と、NTTデータ イントラマートが提供する講座内容に関して
小泉: OCEB2の試験は具体的にどのようなものになるのでしょうか。吉野: 基本的には、日本語版の試験問題で4択問題になります。OMGが提供している試験は幅広い項目から出題されるので、試験に対応する知識を学ぶことで、BPMに関する幅広い知識を身に付けることができます。
現在計画している試験は3つの段階に分かれています。まずは初級基礎という試験があり、この試験を合格するとBPMの基本の理解とプロジェクトのコーディング、開発参加への認定資格が得られます。
その後はビジネス系統とテクニカル系統に分けられ、どちらも中級と上級の試験があります。ビジネス系統の方は、上級まで合格することで、ビジネスアーキテクトとしての資格を持ち、事業モデルのアーキテクチャ開発・推進の責任を持てるだけの資格を持つことになります。
テクニカル系統は、上級まで合格することで、ITアーキテクトとしての資格を持ち、BPMを核とするIT基盤技術設計の全責任を持つ事ができるようになります。
まずは、初級基礎から準備を始めています。
小泉: 中級までの知識を付けることで、ビジネスプロセスコンサルタントとして活動できそうです。
NTTデータ イントラマートが提供する認定資格講座とは、どのような講座になるのでしょうか。
中山: OCEB2の試験問題をベースにした映像コンテンツの教科書を提供するということと、マンツーマンによるサポートという2点を行います。まずは個人がオンデマンドで出来る形式で進めていき、必要があれば、集合研修を企業に提供することも考えています。
日本OMGとの関係性は、大学と予備校といったような形になります。そのため、試験問題をそのまま利用して試験対策をするということはできませんが、過去の試験を参考にしながら、内容に沿ったケーススタディを用意しようとしています。
講座を受けると、BPMに関する実践的な知識を身に付けることができ、これまでのBPM活用の目的だったコスト削減や効率化という点の他にも、新しいビジネスモデルを作るという目的にも対応できるように体系立てて、5,000円で受講することができます。
BPMに関する知識を持つ人が増えることで広がる可能性
小泉: OCEB2に合格するとBPMの知識が得られるほか、どのような利点がありますか。
吉野: 試験に合格することで、ロジカルコミュニケーションができる基盤が作られると感じています。新しいビジネスを作るときには、グローバルのノウハウを連携させる必要があります。そのときの会話の基盤になるものをこのOCEB2に合格することで得ることができます。
中山: プロジェクトというものが、様々な企業や取引先と繋がりながら進むものになります。自社にも相手先にも同じ資格を持っている人がいることで、サプライチェーン全体での最適化が出来るようになる可能性があります。欧米ではそうなっているところもあるため、日本も早く追いつかなければなりません。
小泉: こうしたスタンダードを身に着けた人が企業にいることで、今までよりもレベルの高い経営戦略や経営企画の話ができるようになり、その企業の価値も高まりそうです。本日は貴重なお話ありがとうございました。
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大学卒業後、メーカーに勤務。生産技術職として新規ラインの立ち上げや、工場内のカイゼン業務に携わる。2019年7月に入社し、製造業を中心としたIoTの可能性について探求中。