2020年に続き、コロナ禍に悩まされた2021年ももう少しで終わる。
今年も、いろんなニュースを配信してきたが、「デジタルで未来がどう変わるのか?」というテーマを追いかける身としては、今年はデジタルが一般化し、さまざまな分野の産業、しかも現場を含めた大きな範囲で取り込まれてきたなという感触を持っている。
こんにちは、小泉です。特に、順位付けすることに意味はないのですが、年末ということで社会全体に影響を与えそうな話題について、独断と偏見で今年を振り返っていきます。気楽に読んでください!
第3位:デジタル庁発足
菅内閣の肝煎で始まったデジタル庁構想だが、2021年9月、ついに発足した。「誰一人取り残さない、人に優しいデジタル化を。」というミッションステートメントの下、行政サービスのDX、マイナンバーを中心としたデジタル改革をまずは行なっていくようだ。
すでに、デジタル庁と関係なく、ハンコの廃止など行政のデジタル化に向けた動きもスタートしている。国土交通省が作った、都市のデジタルツインなども非常に興味深い。
さまざまな省庁で、こういった動きもあるが、デジタル庁としての目玉はやはりマイナンバー周りや、デジタルガバメントといったところになる。
マイナンバーカードができて以来、住民票の交付などをコンビニでできるようになったわけだが、「これだけ?」という意見を言う方がたくさんいた。
しかし、本質的には、個人番号が振られていれば、個人に紐つく行政サービスは全てデジタル上で実行できるようになるというところに面白さはある。基本台帳が存在することで、社会全体のコスト低減につながり、さまざまな情報が瞬時に利活用することができるようになるというのだ。
世界の事例として、エストニアの場合、「X-ROAD」というプラットフォームを活用し、電子選挙や、電子国民制度などを実現している。
X-Roadは、分散されたデータベースを安全に連携させるプラットフォームで、すべての送信データをデジタル署名などで暗号化したりすることができる。データの転送もセキュアに行うことができるというものだ。
他にも、EU内では身分証になったり、パスポートになったりするし、健康保険証にもなり、医療記録を見れたり、薬の処方箋の履歴を追えたりする。
この辺は、すでに日本でも検討が進んでいて、すでに健康保険証の代わりになっているし、12/20から新型コロナウイルスのワクチン摂取記録にも活用できるようなっている。
一方、エストニアでは、さらに産業界との連携も実現できている。
エストニアではマイナンバー(のようなもの)と銀行のシステムが連携していて、認証に個人番号が使われ、セキュアに送金手続きを行うと入ったことも実現されている。eIDASという、欧州の電子ID保証制度おいて最高水準の評価を得ていることもあり、こういったサービスの認証に使われているのだ。
読者のみなさんも、現在多くのSaaS等のサービスを使われていて、個別の認証サービス、複数のパスワードに辟易とされているのではないだろうか。
パスワードを覚え切れず、結局メモ帳に書くなどするくらいなら、一箇所だけ徹底的にセキュアにしてもらって、それを鍵にして他のサービスを利用するという考え方もありがたいのではないだろうか。
特に、銀行や証券会社のような個人の資産に大きく関わるサービス、医療記録や薬の処方記録、自動車免許、賞罰の記録といった、個人の人生に関わるようなサービスもデジタル化がどんどん進む中、とてもセキュアな環境からのログインをしたいと思うし、どこかにメモを置くようなことはしたくないものだ。
ただ、日本の行政システムがこれまで行ってきたような、重厚長大な開発しかできない状況を改善できなければ、スピーディにサイバー犯罪の脅威に対応することができなくなり、逆に世界中に存在する悪意の第三者から狙われることとなり、大きな問題に発展しかねないと言うこともあり、これ自体、大きな二面性を持っているとも言える。
また、こういった利便性が向上する一方で、「監視社会」になってしまうのではないか?という懸念を持つ声も多い。
マイナンバーが銀行のもつ情報と連携することで、預金状況や入出金状況を把握できるようになるし、さまざまなサービスのログイン機能を提供すればするほど、個人が何をしているかを簡単に追うことができるようになる。
犯罪者の逮捕などが迅速になると言う恩恵がある一方で、特に悪いことをしていなくても、なんとなく気味が悪いと思う気持ちもある。
海外でも、こういったプライバシーの配慮と、利便性のバランスについてよく議論をされているので、日本でもここの議論についてはきちんと行い、必要に応じて国民参加の投票なども行なっていただきたいところだ。
デジタル庁へも引き続き期待したい。
- マイナンバー連携が進み個人管理のあり方を変えるかもしれない
- 行政のDXを皮切りに、全国的にDXが推進されていくかもしれない
- 医療など既得権益が強い業界でもDXが推進されていくかもしれない
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IoTNEWS代表
1973年生まれ。株式会社アールジーン代表取締役。
フジテレビ Live News α コメンテーター。J-WAVE TOKYO MORNING RADIO 記事解説。など。
大阪大学でニューロコンピューティングを学び、アクセンチュアなどのグローバルコンサルティングファームより現職。
著書に、「2時間でわかる図解IoTビジネス入門(あさ出版)」「顧客ともっとつながる(日経BP)」、YouTubeチャンネルに「小泉耕二の未来大学」がある。