EYストラテジー・アンド・コンサルティング(以下、EYSC)は、体験型のプログラムと人材が集結してイノベーション実現を推進する「EY wavespace」を世界で展開しており、バーチャル型と対面型両面での空間構築を行っている。
また、Microsoftとアライアンスにより、Microsoftのクラウドソリューションと、EYSCのコンサルティングサービスを組み合わせながらDXを促進する、「EY Experience for Microsoft Solutions」を提供しており、EY wavespaceにて体験することができる。
そこで本稿では、実際にEY wavespaceに伺い、日本におけるDXの課題やDXを実現するために必要なステップを体感できるサービス「EY Experience for Microsoft Solutions」の内容などについて、EYストラテジー・アンド・コンサルティング株式会社 テクノロジーコンサルティングリーダーパートナー 田畑紀和氏に、お話を伺った。(聞き手: IoTNEWS小泉耕二)
グローバルな人材やサービスを集結させる場「EY wavespace」
EY wavespaceは、デジタル系のワークショップを開催する物理的な拠点だ。東京をはじめマドリッドやロンドンなど、世界各国に展開しており、各国それぞれの人材や強みを連携させながら、課題解決や価値創出を行っていく。
EYは人材においても物理的においても、グローバルなネットワークを保有しているため、最適な人材やサービスをEY wavespaceに集結することができ、アイディアや製品の開発やテストのサポートも行っている。
EY wavespaceには、AIカメラと大型4Kディスプレイを備えたスタジオがあり、オフライン・オンライン・ハイブリッドでの開催形態が可能だ。
そのEY wavespaceでは、EY Experience for Microsoft SolutionsサービスによってDX推進に向けての課題や、発案されたソリューションを体験するために、Microsoftのデジタル・コラボレーション・ツールや対話型ホワイトボードなどのクラウドサービスや、VRやARなどを活用し、体験することができる。
ゴールへの解像度を上げ、4つのフォーカス・テーマに注力する
EY Experience for Microsoft Solutionsという、実際に体験しながらDX検討するサービスを作った背景を伺うと、主に意思決定を行う経営層が、本当の意味でデジタルを理解し、活用できていない現状があると田畑氏は言う。
「日本におけるDXの課題は、人がパソコンで行っている作業を自動化する、RPA導入に重きをおいてきたことだと感じています。
つまり、目的やゴールを明確化しないまま、今あるシステムに機能追加・拡張することにより、操作の自動化を新しいアーキテクチャで再現しているに過ぎません。
そうではなく、ゴールに対する解像度をあげ、どこに向かうのかをビジュアルとしてイメージしてもらうことが、1番はじめに必要なのです。
そして、定めたゴールへ向けてのケイパビリティを高め、必要なテクノロジーやITソリューションを実際に活用しながら検証していくという機会を提供するために、EY Experience for Microsoft Solutionsが構築されました。」(田畑氏)
また、こうした課題を解決するために、EYSCが注力している事柄を「4つのフォーカス・テーマ」として掲げている。
1つ目がDXの内製化だ。これまで日本企業では、デジタルやITを自社に取り入れようとしたとき、外部のITベンダーに委託してきたという歴史があったという。
そこで、自社のビジネスや業務へのインパクトを捉え、今あるソリューションやサービスを組み合わせながら社員がデザインすることが重要なのだと田畑氏は述べる。
2つ目がレガシー化した基幹業務システム(ERP)のモダナイゼーションだ。
日本企業では、数十年にわたり活用されているERPがいまだに存在しており、これまでの成長を支えていた一方、保守・運用コスト増やセキュリティホールのリスクなど、様々な問題が顕在化しているのだという。
そこで、クラウドサービスを活用したモダナイゼーション手法に切り替え、アドオン開発(ソフトウェアに新たな機能を追加すること)に頼らない拡張性の高いシンプルなERPを構築していくのだ。
アドオン開発してしまうと、クラウド側で頻繁に行われる機能拡張が活かせないためだ。
また、クラウドサービスでサポートしていない機能を拡張したい場合においても、ノーコードやローコードで行えるソリューションを活用することで、内製化することが重要だと語る。
3つ目が、ウェルビーイングだ。これは顧客だけでなく、従業員のウェルビーイングも含まれている。
例えば、アプリケーションの使用履歴から個人の業務量や協業状況などを把握し、働きすぎを防止するような提案や、協業しているメンバーの情報を見つけやすくする等の改善につなげるなど、科学的なアプローチが考えられている。
そして4つ目がサステナビリティだ。
昨今、非財務情報の開示が重要な経営指標となるなか、数値データを集めるためのソリューション開発が海外で進んでいる。
そこで、そうしたソリューションの情報をいち早く入手し共有することで、業務に適合するようであれば、日本でもスピーディに導入する事ができるのだ。
このように、現状を理解しゴールを定め、意思決定していくための材料を提供しているのだと田畑氏は語った。
ゴールと現状のギャップを認識し、DXを実現するための4ステップ
では具体的に、どのように4つのフォーカス・テーマを実現していくかについて伺った。
田畑氏は、EY Experience for Microsoft Solutionsを通じて、目指すべき姿とそこに至るまでの道のりを実感するために、「体験」「共感」「発案」「創出」という4つのステップを踏むのだと述べる。
体験ステップでは、先進事例を通じ、Microsoftが提供する「Microsoft Azure」や「Microsoft Dynamics 365」などのクラウドソリューションを実際に体験する。
実際に体験してみることにより、刺激を感じ、明確なイメージを持ってもらうことが重要なのだという。
そして共感ステップでは、自社の現状を把握した上で、目指すべき姿とのギャップを認識し、どのようにゴールへと向かうかのロードマップを、ワークショップなどを通じて構築していく。
発案ステップでは、ソリューションを発案するためのデザイン・シンキングのワークショップの実施や、発案されたソリューションの導入によるビジネス効果を明確化する。
創出ステップでは、発案されたソリューションの実現性などの効果検証をしていく。
田畑氏は、「重要なのは、自社の業務やビジネスに、どのようなインパクトを生み出したいのかをデザインし、そのために様々なサービスを組み合わせることで実現していくということです。
経営層をしっかり啓蒙しつつ、業務を遂行する人材にも発案のイメージが湧くような場として提供しています。」と語った。
無料メルマガ会員に登録しませんか?
現在、デジタルをビジネスに取り込むことで生まれる価値について研究中。IoTに関する様々な情報を取材し、皆様にお届けいたします。