高齢化が進む中、運転ミスによる交通事故が社会課題となっており、ドライバーのエラーを最小限に抑える必要がある。しかし、エラーの元となる不適切な情報処理に関係する神経機構はわかっておらず、また運転中の脳活動の計測は技術的な課題があった。
そうした中、株式会社アラヤと株式会社本田技術研究所は共同で、運転中の脳活動から安全運転に関わる部位を特定し、AIを活用して先んじて危険因子を運転手に知らせるシステムの実証実験などの、一連の結果をまとめ、第27回ESV国際会議(ESV2023)で成果を発表した。
今回、運転中の脳内メカニズムを調べるために、国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構(以下、QST)を実験のサポートとアドバイザーに迎え、機能的磁気共鳴イメージング(fMRI)に対応した運転シミュレーターを活用し、実験を行った。
具体的には、参加者にfMRI内で運転シミュレータを操作してもらい、運転操作中の脳活動と視線を測定した。
安全運転に関してリスクの低いドライバー(リスクミニマムドライバー)と、一般ドライバーのリスクに遭遇した時の脳の活動の差を抽出した際、楔前部と呼ばれる部分に顕著な活動の差があることがわかった。
運動前野、一次視覚野など他の脳部位の活動を含めた結果から、安全運転に関してリスクの高いドライバーは空間認識力が低く、危険が見えていないために予測できないことがリスク要因であること、そして経験した記憶や知識を元にリスクを判断していることが示唆された。
この研究をもとに、本田技術研究所は、安全な運転のために必要な認知処理を補完し、運転手を支援するヒューマン・マシン・インターフェース(HMI)を構築した。
そしてHMIの有効性を検証するために、車両の前部と5つのディスプレイから構成された運転シミュレータを使用して実験を行った。
その結果、HMIは高リスクなオブジェクトを早期に認知して回避する効果があることがわかり、この研究によりこのインターフェースは、安全運転に必要な認知処理を補完し支援できることが実証されたとしている。
無料メルマガ会員に登録しませんか?
IoTに関する様々な情報を取材し、皆様にお届けいたします。