量子コンピュータは、特に化学・創薬の分野で注目され、革新的な新規材料や新薬の創出などが期待されている。
これまでの材料開発は、研究者が過去のデータや経験を基に、所望の物性値を持つと期待できる分子構造を設計し、実際に合成、物性値の測定などを繰り返し行うことで、有望な化合物を探索するため、時間のかかるものであった。
しかし近年、機能発現のメカニズムなどを解明する計算化学や、AIなどが膨大な材料データを効率的にスクリーニングするマテリアルズインフォマティクスなどの新しい手法を活用することで、研究開発の加速が図られるようになってきた。
最近では、量子コンピュータの研究分野における活用もはじまり、この計算化学に量子コンピュータを利用することで、従来のコンピュータでは計算できないような複雑な分子に関しても、高速・高精度に計算できる可能性があると期待が高まってきている。
量子コンピュータで計算した分子の構造や特性値は、マテリアルズインフォマティクスにとっても重要な学習データとなり、スクリーニングの際の探索領域が格段に広がることが期待されている。
そうした中、凸版印刷株式会社と国立大学法人大阪大学量子情報・量子生命研究センター(以下、QIQB)は、量子コンピュータを活用した材料開発・評価手法に関する共同研究を、2023年3月より開始した。
この共同研究では、凸版印刷が研究・開発に取り組む材料や製造プロセスの課題に対して、量子コンピュータを活用した材料の物性値予測や、様々な化学反応の解析シミュレーションの演算を行い、量子化学計算アルゴリズムの開発と実証を行う。
具体的には、凸版印刷の事業領域で開発・製造する半導体・ディスプレイ関連部材や建装材・パッケージなどの材料の物性値予測や、様々な化学反応の解析シミュレーションなどの演算を量子コンピュータを活用して行い、新規材料の物性値計算や化学反応の解析シミュレーションを量子コンピュータで実行するための量子化学計算アルゴリズムの開発と実証を行う。
これにより、従来のコンピュータでは計算できなかった分子の計算が可能となるか検証する。
また、量子化学計算アルゴリズムを量子コンピュータに実装し、各種演算を実施。材料開発手法を確立する。
なお、共同研究は、JST共創の場形成支援プログラム(COI-NEXT)、量子ソフトウェア研究拠点における共同研究の一環として行われる。
凸版印刷とQIQBは共同研究を通じ、材料の開発・評価プロセスの変革とスピードアップ、革新的な新規機能性材料の創出などを目指している。
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