IDC Japan株式会社は、国内クラウド市場予測を発表した。これによると2022年の国内クラウド市場は、前年比37.8%増の5兆8,142億円(売上額ベース)となった。また、2022年~2027年の年間平均成長率(CAGR:Compound Annual Growth Rate)は17.9%で推移し、2027年の市場規模は2022年比約2.3倍の13兆2,571億円になるとIDCは予測している。
なお、国内クラウド市場は、「サービス(ビジネスコンサルティング、 ITサービス)」「パッケージソフトウェア」「インフラストラクチャ(サーバー、外付型ストレージ、データセンター向けイーサネットスイッチ、IaaS)」に関わる売上の合計を指している。
現在、国内クラウド市場は、従来型ITからクラウドへの移行(クラウドマイグレーション)が順調に推移している。なかでも、クラウドマイグレーションの対象となるシステム領域/ワークロードが、Webシステムや情報系システムから基幹系システムまで多様化しており、2022年の同市場の成長を牽引した。また、2022年3月以降、急速に進んだ円安の影響や部材の高騰によって、製品/サービスの単価が上昇したことも同市場の成長に寄与した。
2023年の国内クラウド市場は、2022年と比較すると大幅な成長鈍化を見込んでいる。このことは、2022年の成長が、製品/サービスの単価の上昇や、ハードウェア製品の供給不足からの回復といった要因によって底上げされた側面があり、その反動によって前年比成長率が抑制されることが大きな要因とIDCは見ている。また、2023年の国内クラウド市場規模が7兆円を超え、国内エンタープライズIT市場における従来型ITを超える規模まで拡大したことも大きな要因となっているという。
DX/データ駆動型ビジネス(※1)に対する企業の関心が非常に高い状況は継続している。また、DX/データ駆動型ビジネスを実践するIT環境として、クラウドの重要性は高まっている。
しかし、DX/データ駆動型ビジネスは企業の経営戦略に直結すると共に、企業文化や組織の変革、デジタル人材が求められるため容易ではない。そのため、現在の国内クラウド市場では、ITや業務の効率化を目的としたクラウドの導入/利用が中核となっている。もちろん、DX/データ駆動型ビジネスに対する企業の投資は拡大しており、今後の国内クラウド市場を牽引する。
なお、クラウドマイグレーションに支えられ高い成長を遂げてきた国内クラウド市場リプレイスメント/効率化(※2)は、DX/データ駆動型ビジネスへの発展(クラウドジャーニーの発展)や規模が拡大したことによって、2024年以降、急速に前年比成長率が低下していくとIDCはみている。
国内クラウド市場では、その成長の牽引役が「クラウドマイグレーション(リプレイスメント/効率化)」から、「DX/データ駆動型ビジネス」に移行し始めている。すなわち、企業のクラウドジャーニーが新しい局面を迎えたといえる。したがって、ITサプライヤーは、目先の大きな需要である「クラウドマイグレーション」と、今後の大きな成長領域であるDX/データ駆動型ビジネスを連携させる必要があるとIDCはみている。
IDC Japan Software & Servicesのリサーチディレクターである松本 聡氏は「ITサプライヤーは、内製化支援の強化やFinOpsといった新しいアプローチに積極的に取り組むと共に、DXユースケースを設定してオファリングを整備する必要がある。また、最近高い注目を集めるGenerative AI(生成AI)の活用を意識したユースケースの設定にいち早く着手することが重要である」と述べている。
※1 DX/データ駆動型ビジネス:「従来型ITからのクラウドへの移行」や「クラウドを活用した新規システムの導入」に関わらず、DXやデータを活用したビジネスに対する投資。
※2 リプレイスメント/効率化:従来型ITからクラウドへの移行や、従来型ITでは導入していないがクラウド環境やビジネスの効率化を目的とした新規投資。
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