製造業DXを実現するオムロンの最新PLC「NX502」をわかりやすく解説

本記事はオムロン株式会社の協力のもと作成しています。

電気自動車の需要拡大やカーボンニュートラルの取り組みなど、製造業をとりまく状況は目まぐるしく変化している。それにともない、工場内の設備を制御するために必要なPLCに求められる性能も変化している。

そうした変化に対応すべく、オムロン株式会社は2023年4月に最新のPLC(マシンオートメーションコントローラ)「NX502」を発売した。本記事では、NX502を参考にしながら、製造業DXに求められるPLCの特徴や機能について解説する。

NX502の基本的な特徴

まず、NX502の特徴を簡単に説明しよう。

NX502は、2018年からオムロンが発売している「NX102」の後継となるPLCだ。NX102は高性能かつ安価であるという特徴に加えて、PLCのプログラミング言語に関する唯一の国際標準規格である「IEC61131-3(日本ではJISB3503)」に対応している。そのため日本製のPLCになじみのない海外のエンジニアでもすぐに運用することが可能だ。実際、NX102は世界各地に工場を展開している日本の自動車メーカーなどで採用が拡大しており、オムロンのベストセラー製品の一つとなっている。

そのNX102の性能を大幅に向上させたのが、NX502である。

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PLCは個々の生産設備を制御するのに使われるコンピューターである。また、制御だけでなく設備の稼働状態のデータを収集することで、生産ラインの見える化や異常検知をすることも可能だ。さらに、作業者の安全を守るために設備を緊急停止する仕組みなども、PLCを使って構築することができる。

PLCに求められる機能は、大きく分けると「制御」「情報(データ収集)」「安全」の三つだ。

設備の「制御」はPLCの基本となる機能だ。NX102は制御できるサーボモーターの軸数が12軸だが、NX502は64軸まで対応。さらに制御速度は約6倍、プログラムを書き込める容量は16倍に拡大した。そのため、より高速で複雑な機械を制御することが可能になった。

次に「データ収集」の機能だ。IoTによって設備の稼働状態の見える化や異常検知を行うには、PLCが設備の稼働データをリアルタイムにもれなく収集する必要がある。NX502のデータ収集能力はNX102の約10倍に向上しているほか、他のPLCや設備と連携するためのEthernetケーブルへの接続を2ポートから10ポートまで拡張できるようになった。

そして「安全」だ。たとえば、作業者の手が機械の危険な領域に接近した場合に、センサーで検知しただちに緊急停止できる仕組みが必要となる。こうした安全への要求は世界的に年々高くなっている。NX502は最大10系統で安全制御を含めたネットワーク系統分離ができる。ラインの工程ごとに系統分離することで、安全かつ柔軟なライン構築が可能となる。

NX502の活用事例

次に、NX502が現場にもたらす具体的なメリットを事例とともに解説する。

高速で複雑に動く機械を制御する

昨今では、電気自動車(EV)の需要拡大にともない、EVの二次電池やモーターを製造する企業が増えている。EVの二次電池やモーターの製造には、高速で複雑な制御が必要とされる。しかも要求精度がシビアであるため、少しのずれが品質の低下につながる。

そこでNX502が、EVのモーター製造の現場に導入されている。モーターの製造では、数十軸のモーターを使ってコイルを巻き付けたり、端子を溶接したりと、複雑な機械の制御が必要であることから、NX502が選定されたのだ。同現場では、モーター製造の新規設備を導入してしばらくは品質が安定しない状態が続いたが、NX502を導入することで改善され、設備の早期安定稼働につながった。

製造現場の状況をリアルタイムに把握する

制御だけでなくデータ収集においても、高速さと複雑さが求められる。データ収集の性能が低ければ、高速で複雑に動く機械の状態をリアルタイムに把握することはできないからだ。

NX502は、「ジッタ」といわれるデジタル信号のタイミングのゆらぎを1μs以下に抑えた正確なデータ収集を実現している。また、従来型のPLC(NX102)に対して約10倍のデータ転送能力をもつため、現場で起きていることをリアルタイムで精密に把握・分析し、加工条件に反映することが可能だ。これにより、歩留まりの向上が期待される(下の図)。

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NX502は優れたデータ転送能力をもつため、現場で起きていることをリアルタイムに把握・分析できる。そのため不良の要因を早期に発見し、歩留まりを向上できる。

たとえば、NX502は太陽電池に使われる多結晶インゴットを製造する現場で使われている。シリコンを投入して溶解し、結晶化させることで、インゴットを生成する。この過程で品質低下をまねく現象が起きるのだが、当初はその原因を特定するのが難しかった。

そこでNX502を活用し、温度・圧力・画像などのデータをリアルタイムに収集し、AI分析によって原因を特定した。さらにその結果を加工条件に反映することで、品質低下の問題を解決することができた。

重要なのは、精密な分析には高分解能データを高速に正確な時系列で収集する必要があるが、その場合にはデータ量が膨大となるため、データベースへのデータ転送処理がボトルネックになることだ。NX502は従来型のPLCの約4倍のデータ転送能力をもつため、この問題を解決することができたのだ。

1台のPLCで生産ラインを統合する

昨今の製造現場では急激な需要変動への対応を求められており、設備やラインを柔軟に構築できることが重要になっている。従来の製造業では、個々の設備の制御性能を向上させることが重視されていたが、需要変動に柔軟に対応するには、工場全体を俯瞰して制御することが求められる。

また、昨今ではカーボンニュートラルの実現に向けて工場のエネルギー使用量を低減することが重要だが、この場合にも工場全体の最適化がカギを握る。

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NX502は個々の設備を安全も含めてモジュール化して制御できる。そのため工程の変更があってもライン全体を停止せず、変更モジュールのみ調整すればよいため、リードタイムが大幅に削減される。

NX502は、設備の制御だけでなく安全制御も含めて、最大10系統のネットワーク系統分離と、最大254本のコネクションにより、多くの設備を統合・制御できる。そのため工程変更時でも、ライン全体の操業への影響を最小限とした、変更工程モジュールの調整・チェックのみとし、リードタイムを大幅に短縮することができる。

具体的な例として、自動車の組み立て工場での活用が期待されている。何百台ものロボットが連続的に動作する自動車の組み立て工場では、PLCは工程に合わせてロボットに必要な動作を指示するだけのことが多かった。しかし、それではライン全体が統合されていないため、需要変動に柔軟に対応することが難しく、またライン全体の安全性が保障されていないという問題があった。

NX502を導入すれば、自動車製造ライン全体を統合し、制御することができる。製造する車種が変化した時に、モジュールを変更するだけで生産ラインを変更可能であるほか、ラインや工場全体の生産性を向上できるのだ。

さらに、生産ライン立上げ時にトラブル原因を早期に特定し、立上げ時間短縮も可能とする。これは、2023年7月27日にNX502の追加機能として提供を開始した「オートメーションプレイバック機能」、いわゆる「PLCドラレコ」によるものだ。この機能についてはこちらの記事で解説している。

以上で、オムロンの最新PLCであるNX502の特長や機能について解説した。興味をもった人は、オムロンの製品紹介ページにアクセスしてほしい。

 

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