EVへの変化が急速に進む現在、ICE(内燃機関)車両で過半を占める熱によるエネルギーロスがEVではほとんどなくなり、空気抵抗の影響が相対的に増加する。
タイヤは車体から露出しており、タイヤ付近を経由した空気は車両下部や側面にも大きくはみ出して流れるため、乗用車の空気抵抗によるエネルギーロスのうち20~25%はタイヤが関係する。熱によるエネルギーロスがほとんどないEVでは、転がり抵抗と合わせるとエネルギーロスの約34~37%がタイヤによるものとなる。
こうした中、住友ゴム工業株式会社は、タイヤ開発プロセスにおけるシミュレーション技術「タイヤ空力シミュレーション」を開発した。
「タイヤ空力シミュレーション」は、EVの燃費(電費)性能向上のために、タイヤの転がり抵抗の低減と同時に、タイヤ周りの空気抵抗低減が重要となることに着目した、タイヤ付近の空気抵抗を可視化するシミュレーション技術だ。
実車両データを用い、タイヤのパターンを再現した上で、車重による接地部分のタイヤ形状変化も含めて結果の分析にAI技術を活用しながら、タイヤの回転による空力を計算できる。
さらに、タイヤのサイドウォールの文字や微細な凹凸がパターン同様に回転しながら変形するシミュレーション技術も開発した。
EVタイヤにおいてはサイドウォール部の凹凸を少なくし、空気抵抗を低減する事が重要だが、今回開発したシミュレーション技術を活用する事で、デザインと空力性能を両立させたタイヤ開発が可能となる。
シミュレーションの精度を確認するために実施した実車による風洞実験結果と比較して、タイヤ後方の気流の傾向やサイドウォール部の凹凸を少なくしたEVタイヤの方が標準タイヤよりも空気抵抗値が低く、その変化量も一致したことから有用性が確認できた。
また、AIは空気抵抗が大きい時はサイドウォール部がタイヤの空気抵抗に重要な位置であると示唆しており、AI技術の有効性も確認ができた。
なお、同社は、走行する車両のタイヤ付近の気流をAIを活用した独自のシミュレーションにより可視化し、空力性能を最適化するタイヤ形状の開発を進めており、2027年発表予定だ。
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