長年使われているシステムは、システム設計を正確に把握できる有識者が不在でブラックボックス化していることが多く、現行システムの調査や分析が困難だ。さらに、システム設計書が古い、もしくは一部欠落しているケースも多い。
こうした中、富士通株式会社は、現行システムの全体像を把握し、最適なモダナイゼーション(※)の計画策定を実現する「Fujitsu 資産分析・可視化サービス」を、2025年2月より日本国内向けに提供を開始する。
※モダナイゼーション:古いシステムや仕組みを新しい技術に合わせてアップグレードすること
「Fujitsu 資産分析・可視化サービス」は、現行システムのアプリケーション構造や仕様を可視化する「資産分析・可視化サービス for アプリケーション資産」と、アプリケーション資産から設計書を生成する「設計書リバースサービス for アプリケーション資産」で構成されている。
これにより、アプリケーション資産の全体把握から、新システムに移行すべき資産のスリム化と最適化、メインフレームからオープン環境への移行時の移植性の評価、生成AIを活用した設計書生成などを支援する。

「設計書リバースサービス for アプリケーション資産」では、富士通のAIサービス「Fujitsu Kozuchi」のコア技術を実装し、ソースコード内にコメントなどがなくても、資産分析データや既存の設計情報などの大量データから、人が理解しやすい設計書を生成する。
アプリケーションの機能構造を可視化するソフトウェア地図を自動作成する技術により、アプリケーション資産をビルに見立てて、全体を地図形式で表現することで、アプリケーション資産全体の現状をに把握できる。
また、アプリケーション資産全体をプログラミング言語種別ごとに棚卸し、使用されていない資産および類似ソースコードを検出する。
さらに、不足または重複している資産を検出することで、移行対象となる資産を明確化し、スリム化を図る。
移植性評価においては、アプリケーションに必要なメインフレームの機能を、モダナイゼーション実績に基づき標準化されたプロセスで効率的に選定し、その中からメインフレームからオープン環境への移行の際に障壁となる機能を抽出することで、移植の難易度を評価する。
これにより、例えば、流通業のある企業のケースでは、人手による設計書生成に比べて約50%効率化できる見込みなのだという。
一方、「設計書リバースサービス for アプリケーション資産」は、従来の分析手法である、解析ルールに基づき機械的にソースコードを一行ずつ解析して、システムの構造を解明するという方法と、プログラムの関係性を整理する「Fujitsu ナレッジグラフ拡張RAG for Software Engineering」を組み合わせている。
これにより、コードをただ読むだけでは分からなかったシステムの仕組みを正確に解析し、分かりやすい設計書を作ることができるようになった。

また、生成AIの一種であるLLM(大規模言語モデル)を活用して、資産分析と設計情報生成を行う。
具体的には、残存する設計情報や、既存のプログラム解析ツールもしくはLLMを活用したソースコードの静的解析結果(構文情報、制御フロー、データフロー、呼出関係など)を入力して、資産ナレッジグラフを作成する。
そこから独自のRAG機能を用いて設計情報生成の対象とその関連範囲を高度に検索して絞り込み、関連ナレッジグラフとして抽出し、ソースコードと合わせてLLMに入力することで、ソースコードのみで設計情報を生成する場合に比べ、約40%の品質改善を確認した。

さらにLLMのハルシネーションを防ぐため、入力情報の絞り込みと、LLMの忘却を検知する機能を開発した。
これにより、約95%の忘却防止かつ正確な設計情報生成が可能となったのだという。
富士通は今後、生成AIを活用し、現行アプリケーションの仕様の確認やソースコード修正による影響範囲の確認を対話形式で可能にするなど、生成AIの適用範囲を拡大するとしている。
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