多くのDXシステムの開発では、その初期段階にオペレータや専門家へのヒアリングを行い、システムに必要な要件や機能を明確にする要求分析を行なっている。
しかし、ヒアリングだけでは、忘れてしまったり思い込みによって見逃したりしている操作の実態や、オペレータ自身も気づいていないような暗黙知を把握することが困難であった。
また、オペレータ全員へのヒアリングには膨大な時間がかかることから、ヒアリングが一部のオペレータに限定せざるを得ず、包括的な情報収集が困難であるという課題があった。
こうした中、三菱電機株式会社は、システム操作ログからオペレータの経験や知見に基づくノウハウを可視化し、共有化する「操作ログドリブン開発技術」を開発した。
この技術は、システムの操作ログを可視化し、オペレータがシステム画面に表示している信号の関連性から「同じ目的の操作フェーズ」を自動で抽出・可視化するものだ。
具体的には、設備のセンサから得られる数百の信号の中で、オペレータがシステム画面に表示している信号をシステム操作ログから時系列で抽出する。
また、見ている信号の組み合わせやその順序などの関連性から、教師データなしのAIが「同じ目的の操作フェーズ」を自動抽出して可視化する。

そして、操作フェーズから、操作手順やオペレーションスタイルなどの違いを独自のAIで比較・分析し、可視化する。
これにより、ベテランと初心者の操作フェーズを比較することができ、ベテランの操作ノウハウを明示し、技術継承を効率化することができる。

そして、同技術を活用して可視化したノウハウを基にシステム改善やDXシステム開発の要求分析をすることで、ヒアリングでは把握しきれない操作の実態や暗黙知を収集することができる。
さらに、こうして要求分析して構築されたDXシステムのプロトタイプに、同技術で操作ログを収集・可視化することで、システムの使いやすさや機能を評価することも可能だ。
この評価結果をもとに改良を重ねることで、仕様策定の手戻りを削減でき、仕様策定の期間を6カ月から2カ月に短縮できるとしている。

今後は、2025年度より実証試験を行い、2027年度から公共インフラシステムなどでの実用化を目指す。
また、システム操作ログから抽出したノウハウを、運転員、保守員など、公共インフラ運営の関係者と共有し、相互利用が可能なDXシステムを開発する計画だ。
将来的には公共インフラだけでなく、製造業、医療、物流、建設など、他の業界に応用し、同社独自のデジタル基盤「Serendie(セレンディ)」と連携することで、新たなソリューションの創出を目指すとしている。
なお、今回の開発成果の詳細は、2025年3月2日~3月4日に開催される「INTERACTION 2025」にて紹介される。
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