リアルとデジタルの融合を実現するために必要なDXや人材とは ―RIZAP 鈴木氏インタビュー

RIZAPをはじめとする「ヘルスケア・美容事業」「ライフスタイル事業」「インベストメント事業」を展開するRIZAPグループ株式会社は、2022年2月22日にRIZAP事業のスタートからちょうど10周年を迎えた。そうした中、非対面サービスやウェアラブルを活用したヘルスケア、ECなど、様々なDX事業を展開している。

それに伴い、社内体制や業務プロセスにおけるDXも実現しようとしており、人材採用にも力を入れているという。

そこで本稿では、昨年度より新たにDX推進本部に就任された、RIZAPグループ株式会社 執行役員 DX推進本部長 鈴木隆之氏に、RIZAPで実現しようとしているDXや、必要とする人材像などについてお話を伺った。(聞き手: IoTNEWS代表 小泉耕二)

社会変化に伴った事業と社内体制のDX

IoTNEWS 小泉耕二(以下、小泉): まず、御社の中でDXをどのように捉えているのかについて教えてください。

RIZAP 鈴木隆之氏(以下、鈴木): 弊社では、基幹事業であるRIZAP事業やグループ各社の主力である小売事業において、リアルな「店舗」と、トレーナーや店舗スタッフなどの「人」によって支えられている事業を行っています。しかし新型コロナウィルスの影響もあり、非対面・非接触が求められるなど、社会的に大きな変化が起こっています。

そうした社会的な変化を踏まえ、リアルでの「店舗」「人」「ブランド」の強さを活かしながら、そこにデジタルやデータを融合させることで、既存事業や業務のダイナミックな変革や、新しい事業サービスを創り出していくことを、我々が取り組むべきDXとして位置付けています。

今後弊社が飛躍的に成長できるかどうかは、リアルとデジタルを融合させたDXができるかどうかにかかっており、経営上の最重要テーマだと捉えています。

小泉: 具体的にはどのような取り組みを行っているのでしょうか。

鈴木: 大きくは3つのテーマを掲げ、推進しています。

一つ目は、業務のプロセス改革よりもさらに踏み込んだ、業務そのものをトランスフォームしていくための、グループ横断でのBPX(ビジネス・プロセス・トランスフォーメーション)です。

RIZAPグループは、数十のグループ会社から成り立っており、業務やシステムがバラバラで、ノウハウの横展開なども十分に行えていなかったという課題認識があります。

そこで、業務を集約して、その中でベストな取り組みをベストプロセスとして構築し、各社に横展開していくという取り組みを行っています。

リアルとデジタルの融合を実現するために必要なDXや人材とは ―RIZAP 鈴木氏インタビュー
BPXの対象を表した図。間接部門と直接部門それぞれの業務を統一・共通化していく。

二つ目が基幹事業であるRIZAP事業のDXです。

RIZAPではこれまで、パーソナルトレーナーとリアル店舗を通じて、店舗でのトレーニングやアプリを通じた日々の食事管理、生活習慣改善のサポートを行うことで、お客様の自己実現に寄り添ってきました。

今後は、アプリやWEBでのサービスを大幅に強化していきます。現在、ライブ配信や動画コンテンツ、チャットなどにより、家でもどこでもお客様が日々のトレーニングや生活習慣改善に取り組めるサービスを、既存ゲスト向けにトライアルで提供しています。

また、上記の取り組み以外にも、今後アプリやWEBを通じた新しい価値を提供していくための準備を進めています。

これまで蓄積してきた、RIZAPのブランド、店舗、トレーナー、結果にコミットするためのノウハウなどを活かしながら、そこにデジタルとデータを組み合わせることで、RIZAPが提供してきた価値を、物理的な制約を超えてより多くの人に提供していくことを目指しています。

リアルとデジタルの融合を実現するために必要なDXや人材とは ―RIZAP 鈴木氏インタビュー
Webアプリを活用した、ライブ配信や動画コンテンツ、チャットにより非対面でのサービスを拡大している。

また、ヘルスケア領域のDXでは、トレーニングに加えて、血液検査やウェアラブルなどを活用したデータによるオリジナルプログラムの作成も行っています。

リアルとデジタルの融合を実現するために必要なDXや人材とは ―RIZAP 鈴木氏インタビュー
シニア向けのメディカルボディメイクプログラム(MBM)。トレーニング、健康、食事のデータからオリジナルプログラムを作成する。

そうしたトレーニングデータ、ウェアラブルなどで取得した健康データ、食事の記録データなどに基づいたレポートを作成し、医師のアドバイスを受けるという、ヘルスケアに重きを置いたシニア向けのサービスの展開を始めています。今後は、こうしたヘルスケア領域の取り組みもさらに拡大させていきます。

三つ目が、グループ全体で大きな比重を占める小売領域でのDXです。

EC事業はファッションやインテリア雑貨などで、2018年度から2022年度にかけて約18倍と、大きく売り上げを伸ばしています。

こうしたECの強化として、ECとリアル店舗を融合させたOMO(Online Merges with Offline)や、キャッシュレスといった事業にも取り組んでいきたいと思っています。

「One RIZAP」実現の架け橋となるDX推進本部

小泉: 様々な領域で事業展開をされているのですね。こうした数多いグループ会社の中において、どのような編成でDXを実現していこうと考えているのでしょうか。

鈴木: まず前提として弊社では、ここ数年、経営改革において「One RIZAP」というテーマを掲げ、BPXをはじめとした企業変革モデルによる業務変革を実現してきました。これにより、経営トップをはじめ、One RIZAPとして各グループ会社が一丸となって良い形にしていこう、変革を進めていこうという強いマインドが既に形成されています。

リアルとデジタルの融合を実現するために必要なDXや人材とは ―RIZAP 鈴木氏インタビュー
BPXの全体像。グループ横断で一丸となるための「One RIZAP」というテーマに基づいている。

その上で、私が主管するDX推進本部でデジタルやデータ活用を強化することで、BPXの取り組みを加速させていきます。

また、経営層のビジョンや戦略を実際に形にするため、DX推進本部が各グループ会社と経営層との連携におけるハブとなり、各社のDXテーマの推進をサポートする役割も担っています。

各グループ会社にはすでに優秀なデジタル人材がいますが、人材不足な箇所もあります。そこで、デジタル人材の100人規模での採用を打ち出し、採用活動を進めながら、外部企業とも連携を行うことで、グループ全体のDX推進に向けた体制構築を進めています。

組織的に課題設定を行い、方向性を示す

小泉: 社内体制の構築と、採用・外部連携という両軸で進められているのですね。一方、デジタル視点での現場の課題発見も重要だと思うのですが、どのように行っているのでしょうか。

鈴木: 大きな枠組みでの課題設定はボトムアップというよりは、トップダウンで示していきます。しかし、適切な課題設定や、事業インパクトのあるテーマ設定には、事業や経営、業務のことを理解していなければなりません。

ですので、一部の人間が全てを理解して設定することは難しいと考えています。

そこで、デジタル人材という定義も、単純にエンジニアやデータサイエンティストという専門的な領域だけでなく、事業開発や消費者向けのプロダクト企画、デジタルマーケティングやEC部門など、広義にデジタル人材の採用を進めています。

小泉: そうすると人材採用には、ビジネス面で推進できる人材と、デジタル面で推進できる人材の両面で進めているということでしょうか。

鈴木: デジタルの専門知識やスキル、経験があるのを前提に、事業領域は幅広く設定しています。

また、マインドとしては、リアル店舗があり、トレーナーや店舗スタッフなどの「人」がいてのビジネスであるという点に対して、興味とリスペクトを持ちつつ、そこにデジタルやデータを組み合わせることで新しい価値をつくっていきたいという人材を求めています。

弊社はデジタル完結の事業を行っているわけではないので、DXを進める上での難しさはありますが、その分、これまで蓄積してきたリアルのノウハウやアセットが豊富にあり、かつグループ各社で多様な事業領域をカバーしている面白さもあります。

それらを最大限活用し、さらにデジタルとリアルを融合させることで、新しい価値創造に一緒に取り組んでいければと思っています。

小泉: そうした各プロフェッショナル領域の方々と、組織的に課題設定を行われているのですね。

【「人は変われる。」を証明する】を、人材育成でも体現する

小泉: 課題設定を行った後、現場はどのように実行していくのでしょうか。社内教育など、行っていることがあれば教えてください。

鈴木: 将来的には、必要な教育内容が見えてきた際に、体系化した教育プログラムを構築していこうとは考えていますが、弊社のカルチャーとしては、与えられた教育よりも自主性を尊重しています。ですので、方向性が決まった後は、現場に任せていくことが重要だと思っています。

もともとRIZAPは、【「人は変われる。」を証明する】という企業理念を掲げています。それは社内の人材育成でも同様で、設定したテーマやミッションに対してチャレンジしてもらい、実務の中でいかに成長を促せるかを大切にしています。

実際にこれまでも、新卒社員が入社1、2年目で商品開発に起用され、自分で企画した商品の販売を行ったり、RIZAPグループの経営企画の重要なポジションへ抜擢されたりなど、可能性に期待したチャレンジングな環境を提供しています。

そうした環境の中で自律的に学んで成長していくという点は、DX人材の育成に関しても大切にしていきたいです。

DXにより、社会的意義の大きな事業創造を行う

小泉: それでは最後に、今後の展望や、RIZAPに応募したいと考えている方へのメッセージをお願いします。

鈴木: RIZAPグループでは、【「人は変われる。」を証明する】という企業理念のもと、人々の自己実現に寄り添ってきました。

例えばRIZAP事業では、お客様が求める結果にコミットし、単純にやせるだけでなく、すごく健康になったり、理想の体になって自分に自信がついたりして、よりよい人生を送ることをサポートさせていただいています。

こうしたヘルスケア領域や自己実現領域において、高い価値が提供できていることは素晴らしいことだと自負しています。

他方で、店舗と人に立脚したサービスだけでは、その価値を提供できるお客様の数が限られてしまいます。

そこで、我々が提供してきた価値や、その源泉となる強みは大切にしながら、そこにデジタルやデータを組み合わせることで、店舗や人の制約を超えて、日本をはじめとする世界のより多くの人に対して、RIZAPの価値を提供していくことを目指していきます。そして、それができることの社会的意義は非常に大きいと思っています。

DXにより、人の自己実現やヘルスケアに寄り添うという、社会的意義の大きな事業を構築していきたいという想いに共感してもらい、共に進めていける仲間と仕事ができれば嬉しいです。

小泉: 本日は貴重なお話をありがとうございました。

RIZAPではこんな人材を募集中

2022年3月9日時点での募集要項です。詳細な最新の情報はコチラからご確認ください。

企業名

RIZAPグループ株式会社

募集職種

詳しくは、「詳細情報はこちらから」より、採用ホームページをご覧ください。

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