東急建設株式会社と東京都市大学理工学部 機械工学科の西部 光一准教授らは、ドローンが橋桁や天井などの構造物(以下、上壁)近傍での飛行時に、制御不能となることを予防して安定化させる新技術を開発した。
今回、新たに圧力回復孔を設けた回転翼(以下、プロペラ)を開発し、これにより、上壁近傍の推力上昇を従来に比べ約20%抑制することが可能となった。
具体的には、上壁近傍を、ドローンが飛行する際に生じる天井効果によって機体が上昇する力(推力)の増大を抑制する、新しいプロペラとして、回転翼の軸(以下、ハブ)部分を貫通する圧力回復孔付きプロペラを発明した。
今回、推力の上昇が回転翼から上壁間に生成される旋回流によって生じる減圧に起因することに着目し、ハブ部分に設置した貫通孔を通じて減圧量を抑えることにより、上壁近傍飛行時の急激な推力上昇の抑制を試みた。
下図は、上壁近傍飛行時のイメージ図と上壁までの距離と推力の関係例(回転翼回転数:4000rpm一定)が示されている。
従来翼を搭載したドローンのプロペラと上壁の距離gがプロペラ直径Dの10分の1(g/D = 0.1)付近で推力が急増するのに対して、発明翼の場合は、その上昇度が小さくなり、その推力上昇率(上壁最接近時と上壁から十分離れた場合の推力比)は、従来翼搭載の場合に対して、約20%抑制可能であることが実験的に明らかとなった。これにより、上壁近傍における飛行制御性・安全性の向上が期待できる。
また、プロペラは比較的単純な構造でできており、既存ドローンへの適用が容易なことから、小型だけでなく、さまざまな大きさのドローンへの応用も期待される。
今後は、研究成果の発信を通じ、屋内環境下や構造物に近接して行うドローンでの点検や軽作業への活用促進に役立つことが期待されている。
また、今回の発明は幅広いプロペラの大きさや形状、運転条件に対応可能であることから、小型ドローンに加え、さまざまな大きさのドローンへの応用も期待される。
なお、これらの研究成果は、「Journal of Fluids Engineering, Transactions of the ASME」に、2023年9月2日付けで早期掲載された。
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