2022年12月に改正航空法が施行され、ドローンは有人地帯での無人飛行が可能となり、環境計測から物流まで様々な業務に活用されるようになった。
しかし、現在のドローンの無人飛行はカメラを用いた画像認識技術に大きく依存しているため、夜間や霧、雨天時など画像認識が困難な状況下では、飛行性能が著しく低下するという問題があった。
こうした中、日本電信電話株式会社(以下、NTT)は、国立大学法人東京大学と共同で、周囲環境の情報を伝える標識として機能するミリ波RFIDタグを開発した。
このRFIDタグはバッテリーレスで、ドローンに搭載可能な小型のミリ波レーダを用いて、空中から広範囲で位置と情報を読み取れる。
可視光に比べて天候の影響を受けにくいミリ波で読み取ることができ、暗闇や悪天候による視界不良状況下でのドローンの航法精度を向上させる。

これにより、電源の設置が難しい未踏領域においても、全天候型のドローンが自律的に活動することができ、災害対応や気象予測に活用することができる。
また、従来のミリ波RFID技術が抱えていた、読み取り範囲の狭さや周辺構造物による読み取り性能の低下という問題を解決するため、タグの構造設計と信号処理手法が新たに確立されている。
具体的には、3次元の再帰性反射を有するコーナリフレクタを利用した、新たなタグ設計手法を開発した。

コーナリフレクタ構造の形状変化(上図a)やバーコードのような配置によるビットパターンと、読み取り可能距離の設計手法(上図b)が確立されている。
実験により、10m以上の距離から仰角30度以上および方位角20度以上の範囲で読み取れ、3次元の読み取り可能な角度が従来の7.8倍以上となることが示されている。

また、固有値解析を用いた空間解像度を、固定しない空間-反射強度推定手法を導入し、読み取り成功率を向上させている。
さらに、得られた空間-反射強度情報を含む点群をクラスタリングすることで、ノイズの多い環境下でもタグの位置を自動検出できる、信号処理手法を開発した。
実験の結果、壁や車、階段などの障害物が周囲にある状況でも高精度にタグを検知して読み取ることができることが確認された。

今後は、ミリ波RFIDタグの誘導技術を用いて、暗闇や悪天候といった環境下におけるドローンの自律的な運用と、災害対応や海洋観測の高度化の実現を推進するとしている。また、物流や医療などの幅広い分野でのパートナーとの連携を目指す。
最終的には、ドローンだけでなく、多様なIoTセンサで構成される空のセンサネットワークによる未踏領域の情報把握に向けて、ハードウェアからソフトウェアまで最適化されたシステムを実装していく計画だ。
なお、この技術の成果は、2023年10月2日より開催されるIoT・ユビキタスコンピューティング分野の国際会議「ACM MobiCom 2023」のメイントラックにて発表される。
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