近年、建築現場では、施工段階での3Dモデル(CIMモデル)の活用が増えており、施工状況のイメージ共有や、早期の課題把握や改善策提案、施工の手戻りの抑制などを実現する、AR技術が注目されている。
しかし、現行のAR技術は主にスマートフォンやタブレット端末、ヘッドマウントディスプレイなどを用いており、視点が地上に限定されていた。また、複数個所に渡って確認するためには、現場内を移動して地点ごとにARの位置合わせをする必要があった。
そこで株式会社ホロラボは、西松建設株式会社との共同研究として、ドローンによる空撮映像に3Dモデルをリアルタイムで重畳し、ヘッドマウントディスプレイと連携して施工の可視化、ドローンの操縦支援を行なう技術を開発した。
この技術は、高速移動が可能なドローンを使用して3Dモデルを重ねている。これにより、地点ごとにARの位置合わせをする必要がなくなった。また、ドローン自身が持つ姿勢、カメラの情報を利用して、マーカなしでARを実現した。
また、3Dモデルの配置には設計の緯度経度情報を利用し、登録された指定座標にWebブラウザから直接配置する事が可能だ。
さらに、操縦者が装着する透過型XRヘッドマウントディスプレイ「Trimble XR10 with HoloLens 2」(以下、XR10)を用いて、操縦中に様々な情報を把握し、操作を補助するシステムも開発した。
「XR10」に投影される空間ヘッドアップディスプレイ(HUD)には、AR重畳された空撮映像の他に、ハンドトラッキングで操作できる3Dモデルの制御UI、撮影機能、飛行中のドローンの各種ステータスが確認できる。
また、位置情報に基づいてドローンの飛行位置をARで投影された地図上に表示することができ、カメラの向きを切り替えて確認する必要が無くなった。
さらに、ARレンダリングの処理負荷がドローン制御やXRデバイスに影響するのを回避するために、これらの演算を現場ネットワーク内の高性能PCで処理。PCから現場のネットワーク上で映像を共有する事で、各デバイスの負担を軽減しながら、高解像度なリアルタイムレンダリングと通信速度を実現した。
加えて、遠隔会議システムと連携する事で、インターネットを通じて遠隔地とも空撮映像の共有を可能にした。
これにより、操縦者は、ドローンを操縦しながら機体の状態、飛行位置、3Dモデルの重畳など、複数の情報を同時に確認できるようになった。
なお、西松建設が施工中のダム建設現場でフィールド検証を実施したところ、広域現場での状況把握や時間の削減が可能であることが確認された。
しかし、ドローンの移動中の伝送速度とレンダリング速度の差による重畳精度のずれなどの課題も見つかった。
今後は、これらの課題を解決するため、精度向上とシステムの最適化、利便性の向上に向けて開発を進めていく方針だ。
[XRを活用したドローン作業支援と空撮映像への3Dモデル重畳技術の紹介動画]無料メルマガ会員に登録しませんか?
IoTに関する様々な情報を取材し、皆様にお届けいたします。