INDUSTRIAL-Xは、フィジカル(設備・モノ)とヒトまでカバーしてDXを推進する
小泉: こうした流れの中で、八子さんは何か新しい取り組みを始めるということですね。
八子: はい、今年の四月に「株式会社INDUSTRIAL-X」を設立しました。目的はDXを推進し、「産業構造を変える」ことです。
小泉: 「産業構造を変える」とはどういうことでしょうか?
八子: これまでDXの議論をしてきて気づいたのは、「DXはデジタルだけでは完結しない」ということです。例えば、産業のIoT化や自動化を進めるには、現場に設備や機器を最適に設置しないといけません。実はここが難しい。デジタルではなく物理的なフィジカルなトランスフォーメーションを必要とするのです。
あるいは、「現場の人の気持ちが変わらない」、「うまくいかないのではないかという恐怖感」、「以前もやったけどうまくいかなかった」、「自分たちの業界ではまだ関係ない」、「現場の作業で手一杯」という話がたくさん出てきます。

八子: この数年間、様々なプロジェクトを行ってきた結果、IoT化やデジタル化という点ではかなり進んできたと考えています。ただ、さらにフィジカルやヒトの部分でトランスフォーメーションを伴わないと、産業がアップデートされるには至らないと考えているのです。
そうした背景から、INDUSTRIAL-Xを設立しました。社名のXは「トランスフォーメーション」を指します。つまり、「産業構造の変革」です。具体的には、3つの柱があります。
一つは、バリューチェーンをフルにデジタル化し、シミュレーション可能なビジネスモデルをつくることです。次に、設備の入れ替えや自動化といったフィジカルな部分のトランスフォーメーション、そして三つ目はヒトです。DXを目指すお客様の社員のスキルやマインドセットを変えるための場づくりに加え、人材の流動化・最適化まで行っていきます。
小泉: なるほど。DXが進まない理由は、設備も人も「今のまま」でやることを前提にしていたからなのかなと実は思っていたのですが、八子さんのお話を聴いて腹落ちしました。まず変えるべきは、デバイスやヒトなどリアルの方ですよね。
八子: そうなのです。また、以上の3つをやろうとしたときに、「何を目指していいのかわからない」、「実行するリーダーがいない」、「予算がない」、「ソリューションがわからない」、「セキュリティが心配だ」という課題が出てきます。そこで、INDUSTRIAL-Xは他のパートナー企業と一緒に、戦略、人、モノ、カネ、情報、セキュリティなどあらゆるリソースを提供するプラットフォームとしての役割を担います。

小泉: 「プラットフォーム」というのは情報システムを指しますか? それとも概念(ビジネスモデル)でしょうか?
八子: 概念ですが、最終的には「マッチング・プラットフォーム」というシステムにしていこうと考えています。これまで私がウフルで推進してきた「IoTパートナーコミュニティ」もプラットフォームです。ただ、そこで感じた課題は、そうした取り組みをさらに推し進めるには、「八子が10人いても足りないな」ということです……。
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技術・科学系ライター。修士(応用化学)。石油メーカー勤務を経て、2017年よりライターとして活動。科学雑誌などにも寄稿している。