寄稿者: AMO Labs CEO / 工学博士シン・サンギュ
AMO Labsは、IoT・クラウド・ブロックチーェンセキュリティ専門企業のペンタセキュリティシステムズ株式会社(日本法人代表取締役社長 陳・貞喜、韓国本社、ヒューストン/米国法人)の子会社。シンガポールに拠点を置き、ペンタセキュリティシステムズの技術を基に自動車データのブロックチェーンプラットフォームのAMO Marketを開発している。
前回の第1回目の記事では、「コネクテッドカーに求められる要素」ついて説明した。今回の2記事目では、Connectivity(連結性)と自律走行 Autonomous Drivingついて再定義する。
連結性:Connectivity
IoTに分類されるデバイスとそうではないデバイスを仕分ける核心は連結性だ。IoTという文脈の中で最も重要な位置の1つを占める自動車が、従来の自動車と区別される核心的な機能もまた連結性だ。従来の自動車にも連結性がなかったわけではない。スマートフォンをBluetoothで連結して電話したり、音楽を聴いたりするのも連結性だ。モバイルアプリで自動車のドアの鍵を開閉したり、エンジンをかけたりする機能を提供するテレマティクス(Telematics)も通信会社を通じた移動通信を使用する。
一方、コネクテッドカー(Connected Car)と呼ばれる自動車は、従来よりも幅広い連結性を追求する。自動車と自動車の間の通信である「V2V」(Vehicle-to-Vehicle)、自動車と道路などのインフラ間の通信である「V2I」(Vehicle-to-Infra)、自動車と電力網の間の通信である「V2G」(Vehicle-to-Grid)、自動車とモバイル機器間の通信である「V2D」(Vehicle-to-Nomadic Device)、自動車と家を連結する「V2H」(Vehicle-to-Home)などがこれに該当する。
自転車、二輪車などの交通手段や歩行者との通信であるV2P(Vehicle-to-Pedestrian)も新しい通信モデルとして浮上する。自動車メーカーは、テレマティクスを通じた断片的なサービスよりも、さらに幅広いサービスの実現に向けてクラウドやオンラインサービスとの連結を提供できる通信モデルを準備している。この通信モデルは、「V2N」(Vehicle-to-Network)、「V2S」(Vehicle-to-Service)、「V2C」(Vehicle-to-Cloud)などの名称で呼ばれている。
V2Gモデルは、前述した「電化」で説明したように、電気自動車が充電器を通じてセカンダリーアクター(Secondary Actor)と連結されるサービスを反映したものだ。V2Hモデルで主導権を先取するため、サムスン電子などの家電メーカーはスマート冷蔵庫やスマートテレビと自動車との連結を試みている。フォルクスワーゲン(Volkswagen)は、2016年のCES展示会でLG電子の冷蔵庫と連結するシナリオに沿った展示をした。
最近は、音声認識機能を搭載したスマートスピーカーの躍進が目立つ。これをリードするのは、Amazonの「Alexa」(アレクサ)だ。2018年のCESでは自動車だけでなく、IoT機器をAlexaと連結した製品がたくさん展示された。Alexaとアマゾンのクラウドサービスを媒介に、自動車とIoT機器、家が連結されるシナリオが自然に完成された。類似の試みは、アップルの「CarPlay」(カープレー)やグーグルの「Android Auto」(アンドロイドオート)でも、それぞれのクラウドサービスを通じて行われている。
各国政府が興味を持つ分野は、V2VとV2Iモデルだ。V2V通信を通じて車両間の衝突事故を、V2I通信を通じて安全運転に必要な交通情報を提供することで交通事故を減らし、安全性を高めることを目指す。米国、欧州、日本、中国、韓国で推進される次世代交通システム「C-ITS」(Cooperative Intelligent Transportation System、協調型高度道路交通システム)事業は、V2VとV2I通信を基盤にして交通システムを革新するものだ。今後のV2Pモデルも次世代交通システムに反映されると予想される。
自動車メーカーがリードするV2CやV2S、V2Hモデルを通じて、自動車は単なる移動手段から、さまざまなオンラインサービスを活用する新たな空間として価値を高め、新しい事業の創出が期待されている。これはSPACEの中の「プラットフォーム」部分と大きな関連性を持つ。
よく自動車の未来像を「スマートカー」(ここにはコネクテッドカーも含まれている)だという。自動車がスマート機器の一つになるということだ。私たちが既に持つスマート機器が一つが「スマートフォン」だ。スマートフォンに連結性がない、特にインターネットにつながらないと仮定してみよう。恐らく「どうやって使ったらいいか」で悩むことになるだろう。新たなスマート機器であるスマートカーも同じだ。自動車がスマートカーに進化するためには連結性が必要なのだ。
自動車の安全度を高めたり、活用度を高めるために連結性は重要な役割をするが、連結性を持つために通信チャネルが公開されることはセキュリティ上の脅威とも共存することになる。信頼できない主体が生成した誤った情報が自動車の運行を妨害したり、露出した通信チャンネルを通じてクラッカーに攻撃されたりするだろう。自動車の制御を乗っ取られるかもしれない。 情報漏えいなどのセキュリティ事故は金銭的な被害で収まる。だが、自動車のセキュリティ事故は人の生命と安全に直結する。それ故にセキュリティの重要度が非常に、いや、最も高くなる。自動車を外部と安全に連結するためにはセキュリティの課題は必ず解決しなければならない。
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