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レンタルバイクのコネクテッド化、スマートフォンアプリサービス
趣味用途のファンバイク、つまりB2C向けのコネクテッドサービスについて、ホンダは以下の2点に取り組んでいる最中である。
レンタルバイクのコネクテッド化
ホンダの調査によれば、二輪免許を持っていてもバイクを購入する事はハードルが高い、と感じるユーザーが相当数いるそうだ。そこで車両を持たなくてもバイクライフを始められるように、ホンダは2020年3月末よりバイクレンタルサービス「HondaGO Bike Rental」を開始した。
ホンダの構想では、このバイクレンタルの車両にも今後、コネクテッドの機能を取り付けていく予定である。山本氏は、「HondaGO Bike Rental」は移動自体がアトラクションとなる体験を提供するサービスにするため、レンタルバイクのコネクテッド化に取り組む、と述べた。
ユーザー向けスマートフォンアプリ
ホンダはファンバイクを購入したユーザーに向けて、コネクテッド機能によって収集されたデータを届けるスマートフォンアプリを開発中である。山本氏によれば、現在開発中のアプリについては単なる「お得アプリ」ではなく、「顧客とホンダをつなぐコミュニケーションツール」を目指すそうだ。
移動データと他のデータを掛け合わせて価値を生む
ホンダは今後、どのようなビジョンを持ってコネクテッドバイクサービスを発展させていくのだろうか。その点についてはスマートドライブ・元垣内氏が、移動データを使った今後の展開を説明した。
まず、今後の展開を説明する前提として、元垣内氏は移動データの活用におけるポイントを2点述べた。
1点目に挙げたポイントは、移動データと別のデータを掛け合わせることによって、新たな価値を生むようにする、ということ。例えば、配達による販売業務を営むチェーンが、店舗ごとの売り上げ情報と、店舗が持つ車両の移動データを掛け合わせて、売り上げ効率の良い店舗の動き方を分析し、その動きを各店舗にノウハウとして伝える。
このように、移動データ単体では分からない、データの組み合わせによって分かる価値を活用する点が重要である、と元垣内氏は言う。
機械の制御、人の行動変容を促すデータ活用を目指す
2点目に挙げたポイントは、機械の制御や人の行動変容につながるデータ活用を最終的に目指す、ということだ。ここで元垣内氏が提示したのは、「ヒトが介在・pull型」「機械が中心・push型」という項目を縦軸に据え、「シンプル・定型」「複雑・非定型」という項目を横軸に据えた、移動データの活用形態の分布図(下記資料参照)だ。

元垣内氏によれば、移動データの活用形態は分布図の右上から左上へと、4つのステップを経て時計回りに進化していく。
第1ステップ:過去データの可視化
過去のデータを可視化して、管理者がモニタリングやレポートを行う。「Honda FLEET MANEGEMENT」はこの第1ステップに位置付けられるサービスであると元垣内氏は語る。
第2ステップ:リアルタイムデータによる自動化
リアルタイムのデータをモニタリングし、簡単な自動化に取り組むステップ。セッションでは「データドリブンな施策の自動実行を行う段階」と紹介された。
第3ステップ:AI、機械学習による予測分析
複雑で非定型な事柄を、AI、機械学習によって予測するステップ。「人間技では出来ない領域のデータ活用」と、元垣内氏は表現した。
第4ステップ:機械の制御や、人の行動変容を促す
予測分析から更に一歩進み、人の行動変容を促す領域があるという。「人と機械の融合領域」と名付けられていた。
元垣内氏は、過去データをモニタリングする段階から、最終的には機械の制御や人の行動変容を促す段階を目指すことで、新たなデータ活用の方法を広げていく事が重要である、と述べた。
予測分析による最適メンテナンス案内
では、移動データと他のデータの掛け合わせ、あるいは機械の制御や人の行動変容を促すデータ活用によって、ホンダのバイクシェアリングサービスは今後どのような変化を目指すのか。
スマートドライブ・元垣内氏が例として挙げたのは、「予測分析による最適メンテナンス案内」である。「Honda FLEET MANEGEMENT」によって取得した走行特性データと、パーツの劣化を計測したデータやタイヤ交換時期を記録したデータ、燃費のデータを掛け合わせて、メンテナンスのタイミングを予測する。さらに故障や劣化の要因を特定することによって、人のメンテナンスを支援する、という仕組みをホンダは目指している。

この「予測分析による最適メンテナンス案内」についてホンダモーターサイクルジャパン・山本氏は、特にEVバイクにおいて有効ではないか、という意見を述べた。EVバイクはバッテリーの特性上、1回の充電で走行できる距離が短い。このような問題を、移動データを活用したメンテナンス案内を行う事によってサポートすれば解決できるだろう、というのだ。
バイクならではの「感動体験」を求める
「予測分析による最適メンテナンス案内」は、B2Bにおける業務の更なる合理化を推し進めるものだが、B2Cの面においてはどのようなサービスの展開を予定しているのか。
これについてホンダモーターサイクルジャパン・山本氏は、コネクテッドによって得られたデータを基にした「バイクならではの感動体験」を提供することになるだろう、と意見を述べた。
例えば、ホンダが取り組んでいる二輪市場活性化プロジェクト「Honda Go」の公式インスタグラムには、ユーザーが美味しいコーヒーを入れるために、わざわざバイクに乗って美味しい湧き水を汲みに出掛ける、といった体験が投稿されている。つまりバイクのユーザーは、単にバイクを移動の手段としてではなく、感動する体験を提供してくれるものとして捉えている、というのだ。
そこで、コネクテッドサービスによって得られた移動データや、スマートフォンアプリにおけるユーザーとのコミュニケーションで得られた情報を活用して、バイクのユーザーに更なる感動体験を提供する、というのが山本氏の語ったB2Cにおける今後の展開である。
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1986年千葉県生まれ。出版関連会社勤務の後、フリーランスのライターを経て「IoTNEWS」編集部所属。現在、デジタルをビジネスに取り込むことで生まれる価値について研究中。IoTに関する様々な情報を取材し、皆様にお届けいたします。