2021年8月27日、IoTNEWSの会員向けサービスの1つである、「DX情報収集サービス」の会員向け勉強会が開催された。本稿では、その中からMONET Technologies株式会社 小澤 拓郎氏のセッションを紹介する。
MaaSは、モビリティを活用したサービスとして知られるが、社会課題を解決するソリューションとしても注目されている。
また、MaaSの社会実装においては、新しいモビリティの価値創出をすることが必要となり、その実現には、1社だけでなく、複数社による共創がキーとなると言われている。
そこで、MONET Technologies(以下、MONET)株式会社 事業本部 事業推進部 担当部長 小澤 拓郎氏に、同社の提供するソリューションや事例、それら取り組みを通して、見えてきたMaaSの展望についてご講演いただいた。
目次
MONETの提供するソリューション
MONETの提供するソリューションは、1.システム 2.モビリティ 3.ノウハウの3つがある。まず、小澤氏より各ソリューションについて紹介があった。
1. システム
MONETは、システムソリューションとして、事業者向けのサービスとユーザー向けの「MONETアプリ」を提供している。MONETアプリは、目的地までの経路を表示するだけでなく、移動に対するインセンティブを受け取る機能などが備わっている。
例えば、目的地点まで移動すると、クーポンが発行されるといったものだ。MaaSの取り組みの中では、このような地域と協力した仕掛けが重要となる。
他にも、MaaSのシステム開発に活用できるデータやシステムなどをAPIで提供する「MONETマーケットプレイス」を運営している。さまざまな企業のAPIをMaaSシステムの機能・要素として提供することで、共創を促す。MONETマーケットプレイスを利用することで、企業は、独自のMaaSシステムやアプリを開発することができる。
2. モビリティ
MONETは、モビリティのソリューションとして、マルチタスク車両を販売している。車内にレールを引いており、そのレールの上に、椅子や机などをアタッチメントのようにつけることが可能だ。車内のレイアウトを自由に変えることで、カフェやリテール、オフィスなど様々な用途で利用できる。
3. ノウハウ
MONETは、ノウハウのソリューションとして、「MONET LABO」という事業開発プログラムの取り組みを行っている。MONET LABOでは、アイデアを作るサポートだけでなく、共創パートナーと繋がる場としても機能している。MONETが連携している自治体を紹介し、マッチングすることもある。
また、新しく、医療✕MaaS領域に特化した事業開発プログラム、「MONET LABO『医療』」も開始している。事業化に向けた各種サポートも行っているという。
他にも、ノウハウという部分では、MaaSサービスの導入支援も行っている。これまで、導入してきたMaaSサービスとしては、地域交通、マンション向けMaaS、医療MaaS、行政MaaS、など多岐にわたる。
MONETのMaaSサービス導入事例
MONETは、2年半の間に43のMaaSサービスを導入しており、小澤氏には、その中の一部を紹介していただいた。それらの事例は、「ヒトの移動」と「サービスの移動」の大きく2つに大別される。
MaaSタウン(ヒトの移動)
地方には、バスの行き先が限られており、タクシーや自家用車を使わないとたどり着けないエリアがある。そこで、MaaSタウンの取り組みでは、オンデマンドバスを縦横無尽に走らせることで、地域内を100%カバーするような公共交通を実現させた。
マンション向けMaaS(ヒトの移動)
マンション向けMaaSは、マンション住人だけが自由に利用できるモビリティである。例えば、駅までの送迎や買い物、病院、幼稚園など、マンション住人にとって便利な専用交通手段となっている。この取り組みによって、他マンションとの差別化を図る狙いがある。マンションにMaaSサービスを付与することで、駅からの距離を気にせず住める物件となる。
企業バスMaaS(ヒトの移動)
企業バスMaaSは、企業が通勤用に保有しているシャトルバスを、地域住民向けにも利用する取り組みである。これによって、地域の数少ない交通リソースを、効率的に活用することができる。
通院MaaS(ヒトの移動)
高齢者の方の、主なバスの利用目的は、通院と買い物であることが多い。通院MaaSは、その高齢者のニーズに応えた、通院に特化したサービスである。サービスの新しい点は、通院予約と同時にオンデマンドバスを予約できることである。スマホアプリを使えない高齢者でも、窓口で通院の予約をするだけで、簡単にオンデマンドバスを予約して来院することができる。ご家族の送迎負担も減らすことができる。
観光MaaS(ヒトの移動&サービスの移動)
観光用の車両は、土日や祝日は利用者が多いが、平日だと利用者が少なく、運行効率が下がるという課題がある。そこで、観光MaaSでは、地域住民の方に観光用の車両を、オンデマンドモビリティとして利用してもらう取り組みを行っている。
また、観光用車両を人の移動だけでなく、フードデリバリーとして利用する取り組みも行っている。ヒトの移動とサービスの移動を組み合わせ、効率化を行う。
行政MaaS(サービスの移動)
行政MaaSの取り組みでは、マルチタスク車両を用いて様々なサービスを提供している。これにより、市民の方々が、市役所や支所に出向かなくとも、近所に行政サービスがやってくる。防災訓練、手話相談、栄養相談、特定保健指導などの行政サービスを受けることができる。
医療MaaS(サービスの移動)
医療MaaSは、オンライン診療に必要な機器や医療機器が積載された車両に看護師が乗って患者宅の近くまで来てくれるサービスだ。このサービスでは、病院にいる医師がテレビ電話を通じて患者をオンライン診療し、看護師は医師の指示のもと、診療をサポートする。
マルチタスク車両✕サービス(サービスの移動)
マルチタスク車両は、様々なサービスと組み合わせて活用されている。例えば不動産会社では、車両の中でマンションの物件紹介を行う取り組みが行われている。自動運転社会が到来すると、営業マンを乗せることなく、自動で物件を紹介するような車両が誕生するかもしれない。
他にも、オンライン面接と組み合わせたものもある。忙しい方でも、移動しながら面接を受けることができる。
MONETの描くMaaSの展望
今後のMaaSサービスは、自動運転の進化によって爆発的に普及する可能性があるという。そのキーファクターとなるのが4つの分野で、1.オンデマンドバス 2.不動産から可動産 3.車内空間の多様化 4.車両のマルチタスク化である。
この4つの分野には、共通して法規制などの課題がある。
例えば、「オンデマンドバス」の場合、既存路線との兼ね合いを考慮する必要がある。また、「不動産から可動産」のように、移動サービス・販売を行う場合は、食品衛生法や酒類販売など、営業許可の問題がある。
そのほか、「車内空間の多様化」の場合は、車内にモノを置くために、安全性を確保しなくてはいけない。「車両のマルチタスク化」においても、同様の課題がある。
MONETは、法規制の緩和に向けた呼びかけも含めて、MaaSの普及を目指して取り組んでいる。そのために、地域の課題やニーズを抽出し、それを官公庁と共有していくという。
最後に小澤氏は、「今は、来たる自動運転社会に備え、どのようなMaaSサービスが普及するかを想像し、共創を進めるフェーズにある。仲間を作り、新たな価値を創造する、まさしく”共創”がキーワードとなっている」と締めくくった。
記事内で紹介したMONETコンソーシアムは、以下のURLから参加可能だ。
https://consortium.monet-technologies.com/
IoTNEWSが提供するDX情報収集サービス
IoTNEWSでは、このような勉強会を含んだDX情報収集サービスを提供している。DXを行う上で必須となる、「トレンド情報の収集」と、「実戦ノウハウの習得」を支援するためのサービスである。
本稿は勉強会のダイジェスト記事だが、実際の勉強会では、IoTやAIの現場を担当している有識者からさらに深い話を聞くことができ、直接質問する事ができる。勉強会以外にも、株式会社アールジーンのコンサルタントが作成するトレンドレポートの提供や、メールベースで気軽な相談が可能なDXホットラインを提供している。
詳細は下記のリンクから確認してほしい。
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大学院卒業後、メーカーに勤務。光学に関する研究開発業務に従事。新規照明技術開発を行う。2021年4月に入社し、DXの可能性について研究中。