日本におけるEV乗用車販売比率(2022年1月〜12月)は1.42%にとどまり、EV普及で先行する北米、欧州、中国に大きく差を付けられている。EV普及を阻害している主な要因として「価格の高さ」「航続距離への不安」「充電インフラ不足」が指摘されている。
価格については、近年、軽自動車のEVや一部の輸入車EVを中心に低廉化が進み、補助金を活用することでガソリン車並の価格で購入可能な車種が登場している。また、充電インフラ不足についても、急速充電器の設置に対して国の補助金が増額されるなど、徐々に拡充している。
一方、航続距離への不安については、バッテリー容量大型化などにより徐々に長距離走行も可能になっているものの、使用環境や運転の仕方、用途などにより、実際の航続距離(実用航続距離)は大きく変動する。
このため、ユーザーごとに異なる実用航続距離をカタログ航続距離(JC08モードやWLTCモードなど)から予測したり、EV導入後の運用イメージ(途中充電の要否、頻度など)をEV導入前に把握することは困難だった。
株式会社ディー・エヌ・エー(以下、DeNA)は、法人のEV普及を促すため、EVの実用航続距離や導入効果予測を見える化するEV転換シミュレータ「FACTEV」を、2023年4月1日よりオートリース会社向けに試験提供を開始する。
FACTEVは、EV普及のボトルネックになっていた実用航続距離が、車両データを取得せずとも簡単にシミュレーションすることができる。EVの実用航続距離や導入効果はバッテリー性能情報がないと計算できないと考えられていたが、今手元にある情報のみでシミュレーションできるようになった。自動車技術とDeNAがこれまでプラットフォームやインターネットサービスの運用で培った、データサイエンスやAIの技術やノウハウを組み合わせることで、予測が可能になった。
また、FACTEVは車検証や定期点検情報、運行管理台帳情報などの基本情報で、車両の使われ方を特定する。さらに、走行地域の道路特性や気象情報の分析を加え、用途に合った候補EVを選定し、実用性能(実用航続距離やバッテリー状況)や導入効果をデータで提供する。シミュレーションには、新たに情報(車載器から取得するCANデータ(※)など)を取得する必要がないため、すぐに候補EVの提示や実用性能や導入効果予測をユーザーに提示できる。


今後DeNAは、FACTEVをEVの導入を加速させるソリューションとして、2024年度の商用化を目指す。さらに、EV導入後の運用支援を見据え、今後はコネクテッドデータを含む各社のさまざまなEVデータをクラウド上で編集・加工(実用性能、導入効果、バッテリー寿命などの予実管理、見える化など)するとともに、各社のEV情報を共通形式で各種サービス事業者(フリート管理、カーシェアリング、エネルギー、保険など)に提供するシステムの構築を目指すとしている。
※ CAN(Controller Area Network):車両のセンサーや制御などに関わるさまざまな車両データが流れる車両内の通信ネットワーク。
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