砂撒船は、港湾工事で利用される作業船の一種で、護岸基礎の築造や漁場として海域環境を改善するため海底に土砂を撒く作業を行っている。従来、砂撒船の土砂投入作業は2台のバックホウをそれぞれ複数のオペレータが交代しながら操作している。また、海底に均一な厚さで土砂を撒くためには、掘削から投入までバックホウ同士が接触しないようお互いにタイミングを合わせる必要があり、作業時間と投入精度はオペレータの技能や経験に依存していた。
さらに、少子高齢化に伴う担い手不足より、熟練オペレータが減少していることから、自動運転による省人化・効率化が望まれていた。
このほど、ARAV株式会社の開発した油圧ショベルの遠隔操作・自動運転システムを活用し、東亜建設工業株式会社が、砂撒船の海上作業における生産性向上を図るための実用化試験を実施した。
ARAVの遠隔操作・自動運転システムは、国内市場における約84%の建設機械に対応が可能であり、ジョイスティックとフットレバーで操作するバックホウやキャリアダンプ、ステアリングとアクセル・ブレーキで操作するホイールローダー等、土木・建設現場で利用されている機体を対象としている。各種センサーにより建設機械の状態や周囲の状況をリアルタイムに把握することができ、自動運転も可能だ。
昨年末、東亜建設工業の千葉県袖ケ浦市にあるヤードにて砂撒船の土砂投入作業を模擬した2台のバックホウに同システムを導入し、実用化試験を行った。検証では、2台のバックホウによる掘削作業を1名のオペレータが遠隔操作し、掘削後の旋回・投入作業を自動運転で行う一連の作業(掘削から投入)を適切に実行できるかの確認を行った。
その結果、お互いのバックホウが接触することなく一連の作業を交互に行うことができ、オペレータによる直接操作と変わらないサイクルタイムで作業ができることを確認した。
今後は、砂撒船のバックホウに同システムを導入するとともに、完全自動化を図る上で、掘削制御技術、障害物検知やトラブルを判断する技術、緊急時の対応などの課題を解決していき、より安全で効率的な作業環境の実現に向け取り組むとしている。
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