インドでは、大気汚染が深刻な社会問題となっており、環境負荷の低い電動車両(以下、Eモビリティ)の普及施策の実施やメトロ交通網の拡張が進められている。
しかし、天然ガスで走る三輪車両(オートリキシャ)やEモビリティの利便性・信頼性が低いため、出発地から最寄り駅までの区間と最寄り駅から目的地までの区間(以下、ラストマイル交通)では十分に活用されておらず、自家用自動車やタクシー、ライドシェアサービスなどで、乗車地点から目的地へ直接移動する割合が高くなっている。
これにより、公共交通とラストマイル交通を利用するときに比べ、道路の交通量が増加し、深刻な渋滞や大気汚染を招いているのだという。
こうした中、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(以下、NEDO)は、「エネルギー消費の効率化等に資する我が国技術の国際実証事業」において、インドのデリー準州政府交通局と、Eモビリティ向けIT運用支援システムの実証事業に取り組んでいる。
このシステムは、オンデマンド運行管理、配車アルゴリズム、バッテリーマネジメントの機能を持つクラウドシステムだ。
Eモビリティ用充電器利用の認証・情報(充電ログ)や、Eモビリティの走行ログ・運行ログ・電池データをモバイル通信でクラウド上に取り込み、オペレータ(車両運用事業者)・ドライバー・乗客向けの3つのアプリを介して、さまざまな機能を提供する。

オペレーターアプリでは、車両管理、運用管理、電池管理を行うことができ、ドライバーアプリでは、需給マッピング、高精度電池残量表示、キャッシュレス決済を行うことができる。乗客アプリでは、空き車両情報、乗車予約、キャッシュレス決済が可能だ。
そして、この実証事業の一環として、事業の助成先であるパナソニック ホールディングス株式会社は、現地協力企業のETO Motors Private Limited(以下、ETO Motors)と連携して、システムの導入を完了し、2023年10月より、実証運転を開始した。
実証運転では、出発地や目的地とデリーメトロのカルカジ・マンディール駅および、近郊3駅(オクラNSIC駅、ネルー・エンクレイブ駅、ネルー・プレイス駅)との間をつなぐラストマイル交通向けのEモビリティを対象に、システムを導入・運用することで、利便性と輸送効率の向上を検証する。
今後は、実証運転で取得されるデータと、システム導入前に取得した基本データの比較により、乗客数の増加や運行効率の向上(車両稼働時間増加、到着時間短縮)、運用コスト削減(オペレーターの省人化、バッテリー活用時間向上)などを検証するとともに、システムの改良・最適化を行っていくとしている。また、交通渋滞の改善やGHG排出量の削減を目指す。
なお、これに併せて、デリー市内のコンベンションセンターで関係者による運転開始式が開催された。運転開始式では、各者のスピーチやパナソニックHDとETO Motorsから実証事業の概要やシステム導入により期待される効果などが紹介された。
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