Nuance Automotiveが目指すのはドライバー個々のニーズに応えるバーチャルアシスタント
ニュアンスでは自動車メーカーとユーザーが最良のコネクテッドカー体験を実現するために、音声だけでなく自然言語理解やジェスチャー認識、タッチコントロール、対話デザインなど様々な技術を提供している。音声技術だけでなく、ドライビングシーンにおける様々なシーンや環境条件ごとに最適なUIをうまく組み合わせることで、ユーザーがストレスなく快適な操作を行うことができるようになるという考え方だ。
ニュアンスはオートモーティブ向けに「Dragon Drive」というコネクテッドカープラットフォームを提供している。自然で直感的な方法でドライバーとのコミュニケーションを実現するためにドライバーの自然な言葉での指示を理解して、必要な情報を自然な合成音声でドライバーに伝えることができるようになっており、音声ガイダンスの途中でも音声認識を使うことができるバージイン機能を搭載したり、ドライバーの様々な要望に応えるパーソナルアシスタントになることができるプラットフォームだという。
また、声紋認証機能も搭載されており、ドライバーの声そのものがパスワードになり認証できたり、パーソナルアシスタントは、人によって異なる音声の特徴(声紋)によってドライバーを識別することで、シートの位置やミラーの向き、エアコンの温度など、様々な個人設定を管理することも可能になる。
さらに、車載器とドライバーが持つスマートフォンとの高度に管理された接続機能も搭載しているなど、自動車メーカーは自動車メーカー独自のブランディング戦略に基づく、個性的なユーザー体験を実現するコネクテッドカーを作り上げるための技術一式を提供している。
冒頭にもあった音声処理の要素技術についてもスライドを使って説明を聞くことができた。
車のマイクからは入った音声は、音声信号処理(SSE)を行い、雑音やエコーの除去処理が行われ、きれいな音声が組込み側とクラウド側の音声認識(ASR)に渡される。組込みとクラウドそれぞれの音声認識でテキスト化が行われ、同じくそれぞれの自然言語理解処理により発話内容の意図理解やキーワードなどの認識結果が、車載機側のアプリケーションに渡される。車載機側アプリケーションに組み込まれたオービテーションと呼ばれる機能を使いクラウド側と組込み側の処理結果を比較して最適な結果を次の処理に利用するのだが、どのようなときに組込側とクラウド側のどちらの結果を優先するかは設計思想により大きく左右されることになる。
例えば、住所認識など組込み側だけで完結できる場合は、組込側だけでレスポンスよくユーザーにレスポンスを返すこともできるし、ショートメッセージやTwitterなどの文章入力など、複雑かつ認識語彙数が多い場合はクラウド側を活用する。組込側のソフトと比べると、クラウド側の音声認識の辞書や自然言語理解の意味理解ロジックは常に最新化することが容易であるため常に最新な情報を利用することができる。
Dragon Driveのソリューションを製品のレベルに落とす上記の図のようになる。
今までは、自動車メーカーや伝送機器サプライヤーに対して、音声認識や音声合成など一部の機能だけを切り売りされるケースがほとんどであったが、Dragon Drive のFramework上で音声認識、自然言語理解、音声合成などが実装され、さらにスマートフォンとの連携、Dragon drive cloudとの連携ができるプラットフォーム上に、車載システムがに必要とされる、電話機能や音楽検索、ニュース連携やガソリンスタンド/パーキング検索、天気予報などをアプリケーションレベルまで作りこみモジュール化して提供できるようにしている。
これにより自動車メーカーや伝送機器サプライヤーは、いままで様々な連携、組込み開発をしなければならなかった部分をDragon Driveで実装できるため開発の期間もコストも圧縮できることになる。
Nuance Dragon Drive コンセプトムービー
https://youtu.be/laxXWUxXcWs
自動車は、設計が始まってからから市場に出てくるまで比較的時間がかかる。そのため、今市場にでてきている自動車ではまだまだDragon Driveの一部の機能しか使われていないが、ソリューションをフル活用するとさらに利便性の高い車載コントロール体験ができるようになる。
最後にDragon Driveを使うとどんなことまでできるかのショーケースのデモを体験した。例えば、設定した目的地の近くの空いているパーキングを検索のうえ確保し、パーキングの駐車位置まで案内をしてくれるだけでなく、燃料の残量と燃費の実測データをもとに途中によるべきガソリンスタンドを案内をしてくれたり、ドライバーが誰なのかというのを声紋認証したうえで、それぞれの人が一人称の車載コントロールができるようになるなど、まだまだ利便性が向上する機能が尽きない。
紹介されたコンセプトムービーのように、家中と車など統合的なエージェントサービスが提供される時代ががすぐそこまで来ているようだ。
【関連リンク】
ニュアンス・コミュニケーションズ
無料メルマガ会員に登録しませんか?
1975年生まれ。株式会社アールジーン 取締役 / チーフコンサルタント。おサイフケータイの登場より数々のおサイフケータイのサービスの立ち上げに携わる。2005年に株式会社アールジーンを創業後は、AIを活用した医療関連サービス、BtoBtoC向け人工知能エンジン事業、事業会社のDXに関する事業立ち上げ支援やアドバイス、既存事業の業務プロセスを可視化、DXを支援するコンサルテーションを行っている。