チーズの食感を制御するシステムを作りたい
プロセスチーズの食感を左右するのは、粘度・水分といわれている。
住友商事マシネックスは、プロセスチーズを製造するロタサームという機械に粘度計・水分計を取り付けることで、チーズの食感を決める重要な粘度と水分を計測できるようにした。
さらに住友商事マシネックスが考えたのは、完成したチーズの粘度・水分、そして稼働中のロタサームから発生する温度や圧力などを取得し、そのデータをAIに解析させてチーズの食感を自動で制御するというものだった。
その第1ステップとして、住友商事マシネックスは粘度・水分などのデータを可視化し、分析を行うことに取り組んだ。
チーズとロタサームのデータを一括表示
チーズの食感を左右するデータ分析を行うには、まずデータの可視化から始める。
ロタサーム本体で生じる加熱温度・蒸気圧力といったデータについては制御盤に集められて、そこから有線で隣に設置されているパソコンに送られる。
チーズの粘度と水分に関しては、加熱・冷却を終えて完成したチーズが出てくるパイプ部分に粘度計と水分計が取り付けられており、この粘度計・水分計が有線で、先ほどと同じパソコンにつながることでデータが送られる。
パソコンに送られたロタサーム本体のデータと、チーズの粘度・水分データは、「AWS」上にあるインフォコーパス提供のIoTプラットフォーム「SensorCorpus」に送られる。
「SensorCorpus」上では収集したデータをダッシュボードで可視化する機能が付いている。住友商事マシネックスはこの機能を使って、下記写真のように各データをモニターで一括表示している。
「ロタサーム」という文字の下に表示されているデータがロタサーム本体から取得できるデータであり、その下に粘度計・水分計を使ってチーズから取得した粘度・含水率が表示される。
グラフで粘度の調節を研究する
データ分析については「SensorCorpus」のダッシュボード機能を使って、チーズの粘度・水分、ロタサーム本体のデータを折れ線グラフで表示し、それぞれのデータをどういじれば粘度や水分に影響を及ぼし、食感が変わるのかを研究している。
例えば粘度については、下記のような方法で研究をしている。
上記のグラフはチーズの粘度、チーズを攪拌するローターの回転数について、1時間以内の推移を折れ線グラフで示したものだ。左縦軸は1分間あたりのローター回転数(単位rpm)。右縦軸はチーズの粘度(単位mPa・s)。横軸は分単位の時間。つまり1分間ごとのローター回転数とチーズの粘度が表されている。
73分のローター回転数と粘度を見て欲しい。ここではローターの回転数を700rpm台から1,000rpmに上げることで、チーズの粘度が上がっていることが分かる。
また、217分のデータを見て欲しい。ここではチーズの原材料を流す量を100kg/hから50kg/hへと半分にしている。すると粘度が約1,600mPa・sから1,900mPa・sに大幅に上がることが分かる。
つまり、より粘度のある=口当たりがまろやかになるチーズを作るためには、ローターの回転数を上げる、あるいはチーズ原材料の流量を減らすことが有効であることが分かる。
このように粘度やその他のデータの相関関係を見ながら、例えば1,900mPa・sくらいの粘度=口当たりのチーズを作るためのローター回転数・原材料流量を設定するなど、作りたい口当たりのチーズのパラメータを研究することができるのだ。
将来的には自動で美味しいチーズが作れる機械を目指す
住友商事マシネックスのチーズ作りにおける取り組みは、現時点では人の手によるパラメータ分析の段階まで到達している。
将来的にはAIによる各データの解析を行い、それを機械にフィードバックして自動制御を行うことを考えているという。さらにロタサームに協働ロボットを連携させて、チーズ製造のための操作を行う実験も検討されているとのことだ。
今回の美味しいチーズ作りのためのパラメータ分析は、省人化したチーズ製造機の実現に向けた第1歩と言える。
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1986年千葉県生まれ。出版関連会社勤務の後、フリーランスのライターを経て「IoTNEWS」編集部所属。現在、デジタルをビジネスに取り込むことで生まれる価値について研究中。IoTに関する様々な情報を取材し、皆様にお届けいたします。