ニューノーマル時代において、あらゆる業界でDXに向けた取り組みが加速しており、それを支える技術のひとつとして5Gの活用が期待されている。2020年に企業や自治体が自らの施設向けに5Gの周波数免許を取得し、業務に合わせて自在に利用できるローカル5Gが制度化された。
製造業では、従来のネットワークでは扱いきれなかった高精細映像や膨大なセンサーデータをローカル5Gにより低遅延で伝送し、リアルタイムに高精度な分析を行うことで、生産性の改善や機器の遠隔制御などを実現することが期待されており、導入に向けた検討が本格化している。
富士通株式会社は、スマートファクトリーの実現に向けて、ネットワーク機器の製造拠点である小山工場において、現場作業の自動化や遠隔支援など業務のDXを実現する4.7GHz帯のSA(※1)および28GHz拡張周波数帯のNSA(※2)で構成したローカル5Gシステムの運用を開始した。詳しい取り組み内容は以下の通り。
- 作業のトレーニング・遠隔支援 :MRによる作業トレーニングや遠隔支援
- リアルタイムな作業確認 :AI映像解析による作業判定
- 運搬作業の自動化 :無人搬送車の位置制御による自動走行
工場内のエッジコンピューティング環境で製品の3Dモデルを作成し、MRデバイス(※3)にその3Dモデルと作業指示を映し出しながら、熟練者や開発者が遠隔から現場の作業者を指導・支援する。ローカル5Gを活用することで、MRデバイスへの大容量データの描画をリアルタイムに行うことができ、遠隔からの作業指導や支援の効率を向上させる。
エッジコンピューティング環境とMES(※4)とを連携し、複数のカメラで撮影した組立作業の映像から、AIが作業者の手、部品ケース、部品を認識し、手順に基づいて指定された部品ケースから正しい部品を取り、基板の正しい位置に実装しているかを判定する。その判定結果をディスプレイや音声を通して作業者へリアルタイムにフィードバックすることで、正しい作業の遂行を支援し、検査の省力化や品質の向上を図る。
工場内外および無人搬送車に搭載したカメラの映像を低遅延でエッジコンピューティング環境に伝送し、AI解析することで3次元での無人搬送車の位置認識と走行制御を行う。これにより、建屋内、建屋間の運搬作業や部品・製品などの積み下ろしを自動化し、運搬コストを削減する。
富士通は今後、小山工場における様々な業務へローカル5Gを適用して検証を進め、2021年度内に製造業向けのサービス提供を目指すとしている。
※1 SA:Stand Aloneの略。5G無線方式のひとつで、コアネットワークを含めて5Gの技術により構成され、4G LTEのコアネットワークを利用せずに単独で機能するもの。
※2 NSA:Non-Stand Aloneの略。5G無線方式のひとつで、LTE設備との連携により5G通信を実現するもの。
※3 MRデバイス:MR(Mixed Reality)は、現実世界の形状などをデバイスが把握し、それらにデジタル映像を重ね合わせる技術。同取り組みでは、日本マイクロソフトの「Microsoft HoloLens 2」を活用。
※4 MES:Manufacturing Execution Systemの略。製造工程における状態の把握や管理、作業者への指示や支援などを行う。
プレスリリース提供:富士通
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