内田洋行ビジネスITフェア2024

B-EN-G、稼働と保全に関する紙帳票でのやり取りをデジタル化

ビジネスエンジニアリング株式会社主催の合同取材が開催され、天馬株式会社のインドネシアチカラン工場(以下、チカラン工場)に対して取材を行った。チカラン工場は、ビジネスエンジニアリングが提供する「mcframe SIGNAL CHAIN(以下、SIGNAL CHAIN)」を導入している。

SIGNAL CHAINは、ビジネスエンジニアリングが提供している、製造現場の問題把握と改善を支援するIoTパッケージである。

天馬インドネシアの副社長である小山田祐美氏は、「これまで紙帳票で行っていたやり取りをデジタル化することで、正確性とリアルタイム性が向上した。今は自信を持って、稼働モニタリングと設備監視が出来ていると言える」と述べた。

OA機器の部品を製造する天馬チカラン工場

チカラン工場には射出成形機があり、OA機器の部品を製造している。
チカラン工場には射出成形機があり、OA機器の部品を製造している。

天馬は、プラスチック製品の製造販売を行っている企業である。ASEAN全域に拠点を持ち、どの拠点でも同じ品質で製品を提供できることが天馬の強みであるという。

今回取材を行ったチカラン工場では、OA機器の部品を製造し、事業者に向けて輸出を行っている。工場には77台の成形機があり、多様な製品の生産が可能である。

SIGNAL CHAIN導入前の課題感

元々、チカラン工場では、作業者が日報を書くことで日々の稼動や実績を把握していた。しかし、紙の日報では、正確な稼働情報をリアルタイムに知ることが出来ないという問題があった。

天馬では、海外工場の場合、作業者が書く日報が正確性を欠く場合があるという。また、それぞれの設備の日報を収集しデータをまとめて、工場全体の1日の実績を確認できるようになるのは、日報を書いた翌日の午後になってしまい、リアルタイムに稼働を確認できるということが出来なかったそうだ。

また、設備のメンテナンスを行う場合でも、履歴を紙帳票に記録していく方法を取っていたが、この方法では実際にメンテナンスの現場を確認するわけではないため、メンテナンスが正しく実施できているかがわからなかったという。また、メンテナンス履歴を一覧で確認するためには、一度記録したそれぞれの設備の紙帳票から、新たに紙やExcelなどに転記する必要があり、帳票を現場で使用した後、事務所まで持ってきて転記するという過程で、紙帳票がなくなってしまうということも起きていた。

つまり、紙帳票を使用することで、稼働の監視も設備のメンテナンスも、正確性とリアルタイム性が欠く場合があったという。

チカラン工場が導入した「mcframe SIGNAL CHAIN」

上述のような課題感を感じていたタイミングで、天馬のタイ工場で稼働監視ソフトを導入したという話があり、チカラン工場でもソリューションを導入したいという話となり、いくつかのシステムの選定を行ったという。

元々、チカラン工場では、ビジネスエンジニアリングが提供しているmcframe生産・原価管理と会計システム(mcframe GA)を導入していたこともあり、SIGNAL CHAINが導入ソフトの候補として上がったそうだ。

その中で、チカラン工場では、SIGNAL CHAINの「OM 稼働モニタリング」と、「EM 設備モニタリング」を導入した。導入のポイントは、IoTで収集した稼働データの活用と同時に設備管理業務をデジタル化し、設備カルテや寿命管理を実現できることであるという。

チカラン工場への導入前の相談や導入支援は、ビジネスエンジニアリングのインドネシア拠点(PT. Toyo Business Engineering Indonesia)が行っている。ビジネスエンジニアリングは海外に拠点を持ち、SIGNAL CHAINの導入企業の半数はグローバル拠点だという。

チカラン工場では、新型コロナウイルス感染症の流行と、SIGNAL CHAINの導入期間が重なってしまうという課題もあったが、ビジネスエンジニアリングのリモートからの支援によってスムーズに導入することが出来たとしている。

mcframe SIGNAL CHAIN OM 稼働モニタリング

「mcframe SIGNAL CHAIN OM 稼働モニタリング」の画面。
「mcframe SIGNAL CHAIN OM 稼働モニタリング」の画面。

「mcframe SIGNAL CHAIN OM 稼働モニタリング(以下、OM 稼働モニタリング)」は、製造設備の稼働状況を様々なデバイスから自動的に収集し、リアルタイムの稼働監視と蓄積されたデータを使った稼働分析により、稼働率、サイクルタイム、製造品質を改善させ、OEE(設備総合効率)を向上させるIoTパッケージである。今回は、設備稼働データを収集するIoTデバイスに、株式会社パトライトの積層情報表示灯「LA6-POE」を採用したという。

OM 稼働モニタリングを導入することで、紙での日報の記録をしなくて良くなったことがチカラン工場における一番の大きな導入効果だという。

作業者が、検査業務などの本来の業務に集中することで品質向上が期待できるほか、何時から生産を開始し何時に生産を終了したかを作業者の負担なく可視化することができる。紙帳票と異なり、リアルタイムにデータを可視化することが可能なので、日報をその日のうちに確認することができる。

アンドンとOM 稼働モニタリングを連動させることで、どの工程が困っているかを可視化できるようになった。
アンドンとOM 稼働モニタリングを連動させることで、どの工程が困っているかを可視化できるようになった。

また、チカラン工場には、元々作業者が困ったときにボタンを押すと信号等が点灯する独立した機能があったが、その機能とOM 稼働モニタリングを連携させ、アンドン上でボタンが押されたかを表示させた。いつボタンが押されたかがわかるようになることで、どの工程の作業者がいつ困っているかを稼働監視上で確認できるようになる。ボタンが押された回数が多い工程をメンテナンスしたり、予め生産技術者をその工程に張り付かせて、トラブルが起きたときに即対応できたりするようになったという。

具体的なコスト面での効果というと、紙の日報で記録された内容をまとめ直すための人件費が全く必要なくなった。事務員2名の作業で、年間100万円程度のコスト効果が出たということになる。

mcframe SIGNAL CHAIN EM 設備メンテナンス

「mcframe SIGNAL CHAIN EM 設備メンテナンス」の画面。
「mcframe SIGNAL CHAIN EM 設備メンテナンス」の画面。

「mcframe SIGNAL CHAIN EM 設備メンテナンス(以下、EM 設備メンテナンス)」は、IoTと連携して壊れない設備を作り上げる保全管理システムである。

EM 設備メンテナンスを導入することにより、設備の修繕履歴をカルテのように一覧にまとめられたことが、チカラン工場にとって一番のメリットだったという。全体の保全履歴を確認できるようになった他、月ごとの保全累計コストを算出できるようになった。

EM 設備メンテナンスのAndroidスマートフォン画面。作業者はスマートフォンを操作し保全履歴を入力できる。
EM 設備メンテナンスのAndroidスマートフォン画面。作業者はスマートフォンを操作し保全履歴を入力できる。

EM 設備メンテナンスは、保全の計画をPCで作成したもので、作業者のAndroidスマートフォンで確認できるようになる。作業者は保全を実施して、その結果をスマートフォンで入力し完了ボタンを押すことで、保全履歴を作成することができる。スマートフォンで撮影した写真や動画をそのまま添付することもできるので、保全がどのように行われているかを視覚的に確認でき、作業者が実際に保全したかどうかの証拠にもなる。

紙帳票でのやり取りに慣れていた作業者は、スマートフォンでの記録に初めは苦戦していたそうだが、二度手間がなく便利であることを理解することで積極的に使用するようになったという。現在では、設備が故障した場合でもシステム上で対応が可能で、紙帳票は全く使用されていない。

機能の追加と多拠点への展開を目指す

今後チカラン工場は、更にビジネスエンジニアリングと連携を深め、新たな機能の使用や、他拠点への「mcframe SIGNAL CHAIN」の展開を考えているという。

稼働モニタリングでは、現時点では設備の稼働時間から稼働監視を行っているが、今後は、一日にどの製品をいくつ生産することが出来たかという観点での稼働監視も行っていきたいとしている。日本国内の拠点では、製品の個数で稼働監視を行っているため、チカラン工場でも同様の方法で稼働監視を行うことで、拠点ごとの稼働の比較ができるようになるだろう。

設備メンテナンスでは、稼働モニタリングとの連携機能であるスペアパーツの寿命管理の導入に向けて準備を進めているところだという。ここでは、プラスチック製品の成型で重要な金型の寿命を、稼働や生産の実績を根拠とした管理に挑戦しようとしている。チカラン工場は、この新たな機能を導入することで、予防保全を実現していきたいとしている。

更に、SIGNAL CHAINとmcframe生産・原価管理との連動も実現していきたいそうだ。SIGNAL CHAINの稼働履歴や生産実績をmcframe生産・原価管理に連動させることで、設備にかかったコストを製品により正確に配賦できるようになる。

小山田氏は、チカラン工場にSIGNAL CHAINを導入した経験をもとに、天馬インドネシアのスルヤチプタ工場にもSIGNAL CHAINを導入していきたいと述べた。

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