世界的な気候変動や環境問題への対応は、近年ではSDGsの観点からも企業の存続に不可欠なものとなっている。製造現場における環境保全業務は企業が果たすべき社会的責任である一方で、環境データの収集作業は人手に依存する部分が多く、人的リソースの確保も困難になっている中、工場のIoT化は喫緊の課題となっている。
凸版印刷株式会社の工場においても、環境データを測定するセンサーが電波の届きにくい屋内や地下、電源が確保できない屋外などに設置されているケースが多く、従来のネットワーク技術ではIoT化が困難だった。
このほど凸版印刷は、自社の工場において、排水の水位や水素イオン濃度などを始めとする環境データを自動収集するシステムを構築した。
同システムは、工場内をくまなくカバーする次世代LPWA(低消費電力広域ネットワーク)規格ZETAのネットワークと、それに接続する各種センサー機器、測定したデータを格納するクラウド型システムプラットフォーム「ZETADRIVE」と、データ監視システムから構成される。
工場内には入り組んだ構造に起因する電波の届きにくいエリアや、電源の確保が難しい場所が多く存在するが、電池駆動タイプの中継器を適切に配置することで、死角のない無線通信ネットワークを構築した。
また、既に工場内で稼働している多数の測定器からの出力情報を、デジタルデータ化しZETA通信のフォーマットで送信するためにデータ転送機器「ZETABOX」を新たに開発した。同機器を利用することで、導入コストの低減や、測定器メンテナンスなどの作業変更を必要としないデータの自動収集を可能にした。
今回、構築の第一弾として導入を開始した自社工場においては、1,000以上の点検項目の内、約10%についてセンサーをZETAネットワークに接続した。工場排水の水位やpH値(水素イオン濃度)、ORP(酸化還元電位)などの情報の自動収集を開始しており、2022年度中に同工場の全ての環境データの収集を自動化するとのこと。
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