ライオン株式会社は、ハミガキの開発を主幹事業としており、研究所にてビーカーサイズで開発した組成を、工場の大型スケールでも生産できるよう、最適な製造プロセス条件を開発する必要がある。
そのためには、製造プロセス中の配管や充てん機におけるハミガキの流れやすさを示す度合いである「移送性」を良くする必要がある。移送性が悪いと、ハミガキを製造した後に個々のチューブに充填されにくくなってしまうからだ。
ハミガキは複雑な物性を示すため移送性を研究段階で予測することは難しく、工場での生産に向けた製造プロセス開発で初めて明らかになることも多いため、研究所での組成開発の再検討が多発していたことが課題だったという。
そうした中、ライオンと株式会社日立製作所は、研究所で開発した新たなハミガキの組成をもとに、実際に工場で生産する際に生じる課題を事前に予測し、製造プロセス上最適な組成情報や物性情報の案を自動提案するシステムを開発した。
具体的には、ライオンが保有している「ハミガキの製品開発の知見」「原料配合量の組み合わせ」「物性測定データ」などのサンプルデータに、日立のMI技術を適用して物性を予測するモデルを構築している。

このモデルを活用して、研究所で新たに開発したハミガキの組成や物性の情報から移送性を事前予測するとともに、移送性の情報などの目標とするハミガキの物性値から逆解析することで、最適な組成情報や物性情報の候補を自動で提案するシステムだ。
このシステムを導入することにより、組成開発の初期段階で、製造プロセス工程の課題を事前予測することが可能となる。さらに、他の課題についても適用範囲を広げていくことで、最大で従来の開発業務時間の約40%を削減できると両社は見込んでいる。
ライオンは今後、システムをより多くの生産課題や品質予測に活用するほか、他製品の製造プロセスへの応用を視野に検討を進めていくとしている。
日立は、今回の取り組みを通じて得た技術やノウハウを活用して、化学・素材産業だけでなく、生活用品や医薬品産業などの幅広い業種へ展開していく予定だという。
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