富士通株式会社は、2015年5月にインテル コーポレーションと合意したIoT分野での協業に基づき、株式会社島根富士通において、同社のIoTデータ活用基盤「FUJITSU Cloud Service IoT Platform(以下、IoT Platform)」と「インテル® IoTゲートウェイ」を連携させ、製造工程を見える化する実証実験を実施した。
その成果として、製造ライン上の機能試験工程、およびリペア工程の適正化を実現し、出荷遅延による追加輸送コストを抑制することで、輸送コストを30%削減。
同社は今後、IoT分野におけるインテルとの連携をさらに強化し、新たなソリューションの創出や、顧客への展開を行っていく。
背景
富士通とインテルは2015年5月に、富士通の先端技術と、相互運用可能なIoTソリューションである「インテル® IoTゲートウェイ」とを連携させることでより最適なシステム環境を構築し、価値の高いIoTソリューションを提供することを目指して連携することで合意した。
その実証実験として、2015年5月より主にノートPCの製造を手掛ける島根富士通において、工場の見える化によって製造工程の効率化を図る取り組みを行ってきた。
実証実験の概要
島根富士通では、製造ライン上の機能試験工程において不具合が検知された製品は、リペア工程に送り、徹底的に不具合の診断・解析・修理を行った上で出荷するが、リペア工程ではその不具合が再現できない場合がある。その際は、不具合が検知された機能試験工程に関わった作業者の作業内容や使用した器具、試験対象製品の状況を総合的に分析し、不具合が検知された原因を解明する必要があるが、従来は機能試験工程での作業状況の見える化が不十分であったため、原因の特定やそれに対する再発防止策を講じることができず、結果として修理対象製品が余分に発生していた。
また、リペア工程では、修理対象製品のリペアライン上での位置や滞留状況、個々の製品の出荷期限情報のリアルタイムな見える化がなされていなかった。そのため、優先的に作業を行うべき製品の切り分けができず、予定していた出荷期限を超過してしまい、輸送トラックの追加手配費用が発生してしまうことがあった。
そこで、まず機能試験工程での見える化に対しては、株式会社富士通研究所が持つ、画像からの文字認識率を高める画像処理技術や、それを活用したアプリケーション開発を短期化するフレームワークを利用し、作業者の作業状況の映像を撮影するとともに、修理対象製品の画面に表示されるエラーコード(不具合の内容を示すコード)を撮影し、「インテル® IoTゲートウェイ」に集約、画像解析処理することで見える化を実現。その結果、エラーコードの収集・集約作業を効率化するとともに、検知される不具合の傾向抽出や、検知した際の状況分析を効率的に行うことが可能になった。今後はこの解析結果を活用し、不具合の誤検知を抑制することで、余分な修理対象製品の発生を削減していくという。
次に、リペア工程でのリアルタイムな見える化においては、修理対象製品をリペアラインに投入する際、それぞれにビーコンセンサーを貼り付け、工程内での各製品の位置や滞留時間、出荷期限を作業者全員が瞬時に把握できるようにした。その結果、作業者全員が工程全体の状況を素早く把握し、出荷期限の近い製品の優先的な修理や、滞留が生じている工程への補助といった効率的な作業が自律的に行えるようになったことにより、出荷遅延が生じた際に追加手配していた輸送トラックの量が減少し、輸送コストの30%削減を実現した。
今後の展開
富士通とインテルは今後、島根富士通で得たノウハウに基づくIoTソリューションを確立し、製造業向けに展開していく。
また、「IoT Platform」と「インテル® IoTゲートウェイ」の連携をさらに加速し、リテールや公共の分野を始めとする他分野向けのIoTソリューションの拡大を行っていくという。
【関連リンク】
・富士通(FUJITSU)
・インテル(Intel)
・島根富士通(Shimane Fujitsu)
・富士通研究所(FUJITSU LABORATORIES)
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