製造業では、多様化する消費者ニーズに応える柔軟性と、現場の工場の生産効率の向上が求められる。さらに人手不足が年々深刻化する中で製品の品質を保持するためにも、人に代わる検査ロボットやデータを自動で収集・分析・活用する「スマートファクトリー」への需要が高まっている。
株式会社アイシンではスマートファクトリーの実現に向けて、AIを活用した目視検査工程の自動化を掲げている。しかし、検査装置とアプリケーションの導入において、アプリ動作が不安定で生産ラインがたびたび止まってしまうことや、エッジ側でAIが動作するデバイスが必須だがすべての生産ラインに導入するにはコストがかかるなどの課題を抱えていた。このため、判定精度の良い検査装置やソフトが完成しても、現場に浸透しにくい状況だった。
エレクトロニクス商社の菱洋エレクトロ株式会社と株式会社スタイルズは、アイシンの自動車部品工場における目視検査工程へのAI導入を、デバイスの選定からシステムの構築まで一貫で支援したことを発表した。
菱洋エレクトロは、エッジAIデバイス「NVIDIA Jetson Xavier NX」を導入して、欠品や不良品を検知する製品検査を自動判定化した。一方のスタイルズは、エッジデバイスを一括管理するのオープンソースプラットフォーム「Kubernetes(※1)」で各生産ラインのデバイスが安定して稼働できるシステムを構築し、「止まらないライン」を実現した。また、Kubernetesの運用基盤である「Rancher(※2)」の活用方法をレクチャーした。
今回のソリューション提供は、Kubernetesの自動負荷分散機能や自己復旧機能を用いることで、AIによる検査の自動化やコスト削減のほか、アプリ動作の不安定が引き起こす生産ライン停止の解消にもつながる。
また、Kubernetesの機能を活かすためにアプリの機能ごとに処理を分けたことで、機能全体を止めずに特定の機能のみのアップデートも可能になった。アプリ不具合時の修正更新の際も、生産ラインを止めることなく安定して稼働が可能とのことだ。デバイスの故障時には、予備のデバイスと置き換えるだけでネットワーク経由でアプリが自動で復元され、すぐにラインを再開できる。
さらに、NVIDIA Jetson Xavier NXは安価なため、予備機を準備してKubernetesでクラスター化しておくと、ダウンタイムなしでラインを動かし続けられるという。また、Rancherによって開発者は自由にアプリを開発でき、現場では必要なアプリのみ使用できるようになった。これにより、現場が能動的に改善を判断し、取り組める作業環境の実現に貢献する。
※1 Kubernetes:コンテナ(同一サーバー上で複数のアプリを分離して実行する技術)化されたアプリを管理するためのツール。コンテナとその内部の管理、複数のコンテナの一括バージョンアップ、設定変更、一斉配置などができる。
※2 Rancher:コンテナ技術を採用しているチーム向けのコンテナ管理のプラットフォーム。マルチクラウドとオンプレミス環境にKubernetesクラスターをより簡単に構築・管理できる。
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