株式会社システムフォレストは、熊本県人吉市に本社を置き、九州地方を中心とする地域の企業に対し、地域密着型でクラウドやIoT、AIソリューションなどを提供している企業だ。
IoTを活用した、養豚場の総合管理などの農畜産関係の事例が有名だが、最近では、養殖業や小売業、行政や製造業など、活動の幅を広げている。
前編では、熊本県人吉市が主導する橋をライティングすることで防災につなげる事例について伺ったが、後編では、製造業における事例について、株式会社システムフォレスト代表取締役 富山孝治氏、最高IoT責任者(Chief IoT Officer)西村誠氏、IoTイノベーションチーム マネージャー 松永圭史氏にお話を伺った(聞き手:IoTNEWS 小泉耕二)
正確な情報伝達を目的に始まったIoT導入の事例
製造業の分野においてシステムフォレストは、IoT機器やクラウドシステムを構築し、データを活用した設備の稼働監視や遠隔保守、予知保全などを行っている。
製造業にIoTを導入する際、必ず設備の制御を行うPLCが関わってくるが、PLCの仕組みを理解したシステム作りを提案できる点が、システムフォレストの強みだと松永氏は語る。
代表的な事例として、光洋電器工業株式会社のお話を伺った。
光洋電器では、主力製品として碍子(がいし:電線と電柱とを絶縁する器具)を製造している。
碍子は磁器製品であるため、成形した粘土を焼成炉(碍子を高温加熱する炉)で焼き固める工程があるのだが、少しの機器トラブルが生産計画に大きく影響する。そのため、管理すべき設備の情報や工場内の環境情報が多く、業務上の負荷が上がっている状況であった。
具体的には、焼成炉の稼働状況チェックや、制御盤に表示される炉内の空気およびガスの発生量、温度などのデータを担当者が手書きで記録し、データの分析が行われていた。
また、現場作業は交代制での勤務であったため、上長への報告や勤務交代時に行われる焼成状態の報告は、人の感覚による「暗黙知」でやりとりが行われていた。
こうした、設備や作業内容に関する情報を正確に伝達することを目的にIoT導入が検討され、焼成炉に空気・温度・ガスといったセンサを取り付けることによる、24時間の自動監視が実現したのだ。
これまでも、温度センサや差圧センサにより、データを取得していたものの、データ活用して自動監視するための仕組みの構築には至っていなかったのだという。
そこで、取得したデータをパソコン上のダッシュボードに時系列で表示するといったことや、トラブル時にはアラームで通知する仕組みを取り入れたのだ。

多目的に展開していくデータ活用力
こうしてデータを蓄積し、時系列で情報を見ることができるようになったことで、焼成炉の特定の部分や部品の劣化などが読み取れるようになり、予知保全にも活用されるようになった。
また、社員教育をする際にも、数値化された指標をもとにコミュニケーションをとることができるようになったのだと松永氏は言う。
さらに、出荷後の品質に問題があった場合、データを訴求して調べることで原因追求することができ、予防処置を取ることも可能だ。
当初は情報伝達を目的としたIoT システムの導入だったが、品質管理をはじめとする様々なデータ活用へと発展させている。こうしたデータ活用の発想は、システムフォレストにPLCの技術を理解したエンジニアが在籍しているからこそ提案できたのだと西村氏は語る。
「製造業や農畜産業は、暗黙知の多い業界です。そこで、熟練の知識や経験に左右されず、形式知で事業継承できる体制を整えようと考える経営者の方が増えてきています。
そうした考えに寄り添う提案ができるのは、PLCをはじめとした制御機器に精通したエンジニアがいるからこそだと考えています。」(西村氏)
今後は、ノウハウとしてたまった知見を活用し、エリアを広げていくと共に、社会的な課題解決のための取り組みも実施していくと富山氏は言う。
「一貫しているのは、システムや技術ありきの事業展開ではなく、お客様にとって必要なシステムを短納期で提供するということです。
リードタイムが長くなればなるほど機会損失になってしまうため、最短かつ最善なシステウを提供するため、必要な仕組みやサポートを組み合わせながら価値を提供していきたいと思っています。」と、一貫した企業理念を基に活動範囲を広げていくと語った。
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