株式会社FAプロダクツは、全体最適されたスマートファクトリーを構築するための総合支援を行うシステムインテグレータであり、「建物」「IT」「人」「設備」をワンストップで提供するコンソーシアム、Team Cross FAの幹事会社だ。
Team Cross FAは、幹事会社と公式パートナー、公的機関が協力し合い、これまで数々の製造企業が抱える課題を解決しながら、実績を作ってきた。
また、ロボットとIoTの展示場「スマラボ」を開設したり、ラインモデル及び実際の生産工場「ロボコム・アンド・エフエイコム南相馬工場」を建設したりと、その成果を見ることのできる場の構築も行っている。
そうした中、目的に合わせて必要な機器やシステムを組み合わせたパッケージサービス「DXモジュールシリーズ」を、2022年11月21日に発表した。
そこで、パッケージサービスとして「DXモジュールシリーズ」の提供に至った背景や具体的な「DXモジュールシリーズ」の内容、今後の展望などについて、株式会社FAプロダクツ 代表取締役社長 貴田 義和氏にお話を伺った(聞き手:IoTNEWS 小泉耕二)
目的別に確実な効果を出す「DXモジュールシリーズ」
まず、「DXモジュールシリーズ」を発表した背景を伺うと、現在製造業におけるDXは第3期に突入しているとし、この流れに対する施策なのだと貴田氏は言う。
第1期は大量生産から変種変量生産へと移行し始めた頃、DXにより達成する目標は、「製品開発の価値を出す」「サプライチェーンの連携」など、長期的かつ抽象的な内容が多かった。そのため、目下具体的に何をしていけば良いのかが分からないという状況だったのだという。
そうした中、第2期では、ひとまず身の回りのデータを取得して見える化をしてみるという流れが生まれたが、見える化しただけでは目に見える成果には結び付かず、その結果予算もつきづらかった。
そして第3期では、生産性の向上やコストダウンという費用対効果が明確なソリューションの導入をしたいという流れに変わった。そこで生まれるのが、「実際に成功した事例を見たい」というニーズだ。
Team Cross FAは、様々な業種や工程での実践事例や、最新機器やツールの導入事例など、数多くの事例を保有している。それらの事例の中から、費用対効果が明確かつ早く安く導入できるものを選りすぐり、パッケージ化し、目的別に提案しているのが今回のDXモジュールシリーズだ。
「我々はこれまで、お客様の課題をヒアリングして目的を明確にし、その目的を実現できる機器のセレクトやシステム構築を行ってきました。様々な組み合わせを何百通りと行ってきた実績があるため、良い組み合わせの事例を数多く保有しています。
その中でも、目的がわかりやすく、費用対効果が高いものを厳選し、15種類のモジュールをDXモジュールの第一弾としてリリースしました。」(貴田氏)
デジタル系のシステムモジュールパッケージ
次に、DXモジュールの具体的な内容について伺った。
DXモジュールはデジタル系のシステムモジュールパッケージと、フィジカル系のロボットモジュールパッケージに分かれており、まずはデジタル系のDXモジュールについて紹介する。
投入計画最適化システムモジュール
これは、実際の工場ラインのモデルをデジタル上に構築し、実態にあった生産シミュレーションを行うモジュールだ。
変種変量生産の生産現場では、基幹システムなどからのライン投入計画を基に、現場の設備状態や在庫、作業者のシフトや段取り時間など、様々なパラメータを加味した計画に見直し、修正する必要がある。
これまでは属人的なカンと経験により作成されており、日々変わる受発注内容や考えるべきパラメータの数を考えると、最適解はなかなか出せないのが実情だ。
そこで、生産シミュレータを活用し、バーチャル上に実際の工場ラインのモデルを構築。現実世界の工場における、稼働実績や故障率、加工時間などを取り込むことで、最適な条件に近い組み合わせがどれかを絞り込んでくれる。
バーチャルな生産ラインを構築する際には、設備の稼働率や段取り替えの時間、作業者のスキル別の処理時間などの標準値により制作することができるが、さらに現場のデータ収集を行うことで、導き出される結果の一致率があがるという。
「データが取れていないから導入できないと思っている方もいますが、現場の標準値があれば1ヶ月程度で導入することも可能です。しかし、最適化の絞り込み精度を挙げようとするならば、設備などからデータを取得する必要があります。
そこで、我々がヒアリングをし、どのようなデータをどれくらいの粒度で、どれくらいの期間必要かを、目的から逆算して導き出します。投資計画最適化システムモジュールは、高い効果がすぐに出るパッケージのひとつです。」(貴田氏)
稼働分析システムモジュール
これは、これまで帳票により集計していた稼働状態や作業日報を、自動でデータ収集してダッシュボード化してくれるモジュールだ。
帳票のデジタル化やダッシュボード化ができていない場合、どれくらいコストダウンができたのか、生産性が上がったのかなどの、正確な成果は分からないことも多い。
また、生産設備の稼働状況や在庫の見える化を行っている企業は多いが、それをどう活用すればいいかわからない状況なのだと貴田氏は言う。
そこで、稼働率や生産性、予定と実績、在庫回転率、製品品質など、どのようなポイントを可視化したいのかをヒアリングし、必要なデータの取得からダッシュボードで見られるところまでをサポートするのが、稼働分析システムモジュールだ。
振動予知保全システムモジュール
これは、FAプロダクツが以前より提供している振動予知保全システム「Siluro(シルーロ)」を、進化させたモジュールだ。
6軸センサを使用して振動とジャイロ(角速度)を解析し、機械学習でモデリングした設備の正常な状態とのズレ幅で異常を検知するため、故障した際の教師データが必要ない。
従来のシステムより、解析スピードが上がったり、波形を観測するだけで判断可能な画面設計にしたりするなど、使い勝手を向上させている。
カーボンフットプリントシステムモジュール
これは、工程、設備、作業ごとのデータを取得して、製品1個あたりのCo2排出量を算出するモジュールだ。
大量生産であれば製品の種類ごとのCo2排出量を測ればよかったが、変種変量や少量多品種になると、品種ごとに通る工程は変わる。そこで、事業所やライン、工程や設備ごとにエネルギーの使用量を測ることで、原単位のCo2排出量を算出できるのがこのモジュールの特徴だ。
「少量多品種の製造現場では、工場全体の電力使用量とラインごとの電力使用量を取得することで、製品ごとのCo2排出量を算出しているケースが多いのですが、いわゆるカン・コツで電力の使用量を割り振っています。
そこで、より信頼性の高い算出結果にするため、稼働状況のモニタリングとセットで設備のエネルギー状況も取得し、ダッシュボードで可視化するところまでを請け負っています。
ダッシュボードはウィングアーク1stが提供している「Motion Board」を活用しており、簡単な操作とダッシュボードの変更が容易であるというメリットがあります。」(貴田氏)
人員配置最適化システムモジュール
これは、生産計画に合わせた人員の作業配置を自動で行ってくれるモジュールだ。
これまではどれくらいのスキルの人が何人必要で、どこに配置するのが最適かという作業配置は、経験に基づいたカンやコツで決定されていた。
そのため、実際には人手が足りなかったり、逆に多く人員を配置してしまったりと、最適な人員配置をするのは難しかった。
そこで、作業者ごとの能力や人の判断基準などの条件を数値化し、生産計画を元に遺伝的アルゴリズムで最適化する。
貴田氏は、「生産計画に合わせて人員配置を行うため、投入計画最適化システムモジュールとセットで導入することで効果が増します。
また、これらを見える化する必要もありますので、ダッシュボード化するモジュールの3つを組み合わせて実行するお客様が多いです。」と、モジュールの組み合わせで効果を最大化させることができるのだと述べた。
生産管理システムモジュール
これは、生産形態に合わせた生産管理システムを導入することができるモジュールだ。
通常、生産システムやMES(作業者や設備へ指示や支援をする製造実行システム)と、受発注や在庫管理、生産指示やSCMシステムなどとの連携を行う場合、大掛かりなシステムになってしまう。
しかし、業種や製品工程によっては、全てを生産管理システムやMESと統合する必要がないと考えられる場合も多く、部分的に統合したいというニーズがあるという。
そこで、業務に合わせたシステムを導入することができるよう、「見込生産型(生産・原価)」「個別受注生産型(PJ生産・原価)」「MES(基幹システム実績入力+棚卸)」という3つのシステムテンプレートから選択することができるモジュールとなっている。
「生産管理システムやMESが古かったり、生産指示を全て紙で行っていたりする場合、システム構築は大掛かりで高額となるケースが多いです。そこで、必要な内容に応じた機能をテンプレート化することで、コストを抑えて導入することができます。」(貴田氏)
フィジカル系のロボットモジュールパッケージ
次に、ロボットを活用したフィジカル系のモジュールについて紹介する。
デバンニング・ロボットモジュール
これは、貨物をコンテナから取り出すデバンニングという作業を、自走式ロボットとAGV(無人搬送機)、3Dビジョンセンサを一体化したモジュールで行うといったものだ。
トラックに積まれているのがパレットの場合、フォークリフトで荷下ろしをすることができるが、トラックの荷台に積まれたコンテナの中にダンボールが詰まっている場合、ひとつひとつ人手で積み下ろしをする必要がある。
こうした作業を自動化したいというニーズは物流業界、製造業界共に根強くあるのだと貴田氏は言う。
このニーズに対し、「活用している自走式ロボットは、川崎重工から既に発売されているロボットです。川崎重工と密にやりとりをしながらモジュール化し、導入実績を積んできたので、改めてデバンニング・ロボットモジュールとして発表しました。」と、販売及びモジュールとしての実績を蓄積した上で、デバンニング・ロボットモジュールとして発表したのだと貴田氏は述べた。
マルチ組立ロボットモジュール
これは、圧入やネジ締め、はめこみなどの、人が両手を使って行う組立作業を、ロボットにより行うモジュールだ。
ロボットによる組立は、ひとつのセルで単純化の作業を行うか、ひとつのセルで複数の作業を行うケースがあるが、このモジュールではその両方に対応する。
「例えば、ネジ締めのみを行う組立ロボットにする場合、様々な種類のネジ締めを実行させるという考え方もありますし、それだとスペースがないという場合には簡単な組み立ては全て実行させるという方法があります。
どちらのケースにおいても、ロボットのティーチングを臨機応変に変更していくことができるため、複数の部品や種類を組立てることができます。」(貴田氏)
インライン溶接ビード検査ロボットモジュール
これは、インラインで行われている溶接などの外観検査を、ラインを止めることなく全数検査をすることができるモジュールだ。
ロボットと3次元センサを組み合わせることで、外観の高速スキャンが可能。人による目視検査や治具検査を、インラインで全数検査することができる。
「決められた面積や厚みで溶接されているかを確認する溶接ビードの検査は大変な作業で、どの溶接工場も困っていました。そこで、ロボットとセンサを組み合わせることにより、計測や不良箇所の特定も行うことのできるモジュールを用意しました。」(貴田氏)
また、インラインでの全数検査を実現するため、前後工程との動作連動も提案するのだという。
洗浄・焼き嵌め・プリセッタシステムロボットモジュール
これは、金属加工の工程である洗浄や焼き嵌め、プリセッタを一連のシステムとしてパッケージ化したモジュールだ。
金属加工の工程では、ツールの洗浄や焼き嵌め、ツール自体を交換する作業を行う必要があるが、その全てを自動化することができる。
また、次に紹介するツール自動交換ロボットモジュールを活用することで、AGVやAMR(自律走行搬送ロボット)と連動し、工具を加工機へセットすることも可能だ。
ツール自動交換ロボットモジュール
これは、ロボットを載せたAGVやAMRが、指示されたツールホルダを取りに行き、工作機械に持って行ってはめることができるモジュールだ。
これまでは、多品種少量生産に伴い増加する段取り替えを、人が作業を行っていた。AGVでモノを運ぶにも、運ぶ場所やモノ自体が変動するため、自動化が進まなかった。
そこで、カメラにより位置を認識することで、モノをピックして搬送することが可能となった。ツールの交換やワークセット、設備操作などもロボットで行うことができる。
このツール自動交換ロボットモジュールと洗浄・焼き嵌め・プリセッタシステムロボットモジュールを連動させることで、洗浄・焼き嵌めといった一連の作業を自動化することができる。
マルチ機能検査ロボットモジュール
これは、スマートフォンのリペアをする際の、機能検査を自動化したモジュールだ。
スマートフォンのリペアには、ライトニングケーブルの抜き差し確認やアプリの立ち上げ立ち下げ、ソフトウェアのアップデートやシャッター動作確認など、様々な工程を踏む必要がある。
また、スマートフォンの種類やOSの違いなどで検査の手順や動き方が違う。
そこでこのモジュールを活用することで、ロボットとカメラ、ハンドチェンジャーにより、様々な機能検査を行うことができる。
店舗別番重仕分けロボットモジュール
これは、食品工場における番重(運搬容器)を、店舗別に仕分けていくモジュールだ。
食品工場では、食材などが詰められた内番重が、外番重に詰められて運ばれてくるが、内番重がどこの店舗に運ぶべきかを仕分ける必要がある。
そこで、このモジュールを活用することで、3Dカメラによって番重の位置を認識し、ロボットがピックアップし所定の位置へと運ぶことができる。
また、空になった番重をコンベアより取り出して足元に仮置き、排出側の番重が満杯になったら足下仮置き場から供給するなどの自動化を行うこともできる。
ロボットを店舗別に置くとなるとコストがかさんでしまうが、ロボットを自走させることで効率的な仕分け作業を自動化させている。
高速外観検査ロボットモジュール
これは、複雑曲面を持つ製品の外観検査を自動化するモジュールだ。
曲面や光沢がある製品は熟練者でなければ検査は難しく、カメラを導入したとしても、1台の固定カメラだけでは全体が見えないという課題があった。
そこで、高速パルス出力機能が搭載されたロボットと、走査型撮像ができるラインカメラを組み合わせ、曲面に沿った高速連続撮影が行えるようにした。これにより、従来の方法よりも検査時間を短縮することができる。
確かな効果で導入障壁を下げ、ハードソフトのアップグレードで変化にも対応
これらのモジュールは既に導入実績があり、実際にスマラボやロボコム・アンド・エフエイコム南相馬工場にて見学できるものも多い。
貴田氏は、「特にフィジカル系のソリューションはなかなかオープンにならず、導入する側からすると本当にうまく機能するかどうか確証を得られにくいという課題がありました。
そこで、実際に見せることができる場を持っている強みと、導入事例が出てきたこのタイミングで、DXモジュールシリーズを発表しました。」と、Team Cross FAならではの確かな効果を実感できる施策を打っているのだと述べる。
また、モジュールはパッケージ化して打ち出しているものの、製造する製品や品種が増えた際の対応も可能だ。ロボット制御技術とハンドの作り替えを行うことで、アップグレードしていくことができる。
さらに、ユーザサイドでカスタマイズすることも可能で、トレーニングメニューを用意するなどのサポートを行っている。
目的別に適切な汎用品を組み合わせることで、費用対効果を最大化しながら、カスタムもしやすい仕様となっているのだ。
貴田氏は、「我々はシステムインタグレータであり、コンソーシアムという形態であるからこそ、課題に対して最適な形でモジュールを構築することができます。
今後は、今回発表した15種類のモジュールに加え、様々なモジュールを展開していきます。」と、製造業のさらなる課題解決へ向けて、展望を語った。
「DXモジュール」ウェビナーのご紹介
この記事の内容をわかりやすく深掘りしたウェビナーを以下の日程で行います。
詳しくは、リンクよりご参照ください。
12/20(火)【第5回】投入計画最適化システムモジュール
12/22(木)【第6回】振動予知保全システムモジュール
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