社会全体としてカーボンニュートラルの実現が目標に掲げられ、各企業に対して温室効果ガス排出量の開示・低減要請が強まっている。化学メーカーにおいても、自動車業界を中心とした顧客から製品別Carbon Footprint of Products(以下、CFP)(※1)の開示要望が急増している。
しかし、化学メーカーにおいては、製品ごとに複数の種類の製造手法が存在し、かつそれぞれの製造手法を多段階に実施する、特有の複雑な製造プロセスを実施する必要がある。これを反映したCFP算定は、多様な計算パターンが存在し、かつ上流原料から下流製品へ正確に排出量を連携していく必要があるため難易度が高く、現在多くの企業で行われているExcel等を活用した個別算定では、多くの工数が発生するなど、現場の担当者に大きな負担が掛かっていた。
株式会社NTTデータとUBE株式会社は共同で、最終製品別のCFP算定システムを開発し、ナイロン、ファインケミカル、工業薬品(製造工場:宇部ケミカル工場)を2023年1月より、機能品(製造工場:宇部ケミカル工場、堺工場)合成ゴム(製造工場:UBEエラストマー千葉工場)製品を2023年7月より、UBEにて同システムで算定したCFPデータを顧客に提供を開始する。
同システムは、Excelや専用システムで管理されているマスターデータ・トランザクションデータには手を加えない形でシステムにインプットし、システム側で変換・集計・計算することで、最終製品別のCFPを数分で算出する。その結果、工場など現場の負担となっていた製品別CFP算定にかかる時間を従来から95%削減し、業務の効率化に寄与する。
同システムで算出した製品別CFPは、ダッシュボード上で顧客軸、製品軸などさまざまな切り口で可視化する。これにより、顧客へのタイムリーなCFPデータの提供、および内部の分析に活用することが可能だ。
また、製造業でも広く用いられているBI製品であるTableauおよび、TableauのETLツール(※2)であるTableau Prepを採用し、アジャイル開発方法論を用いて柔軟に要件に対応することで、プロジェクト開始から3カ月でシステム構築を行った。製品別CFP計算の脱Excel化を目指す企業に対しては、まずは特定の製品群を対象としたアプローチを通じた短期導入が可能だ。
今後NTTデータは、製造業を中心とした多岐にわたる業種に対し、同基盤の提供を含む温室効果ガス関連ビジネスで、2025年度末までに20件以上の受注を目指すとしている。
※1 Carbon Footprint of Products:商品やサービスの原材料調達から廃棄・リサイクルに至るまでのライフサイクル全体を通して排出される温室効果ガスの排出量を二酸化炭素に換算して定量的に算定したもの。UBEで算定を行っているCFPはプロセス合算型データ(Cradle-to-Gate)の考え方に基づいたもので、UBEの上流にあたる原料由来のものや製品輸送時に発生するもの、UBEにおける製造プロセス上で発生するもの、また製造に使用される電力などのエネルギーに由来するものの合算値を指す。
※2 ETLツール:複数のシステムやデータベースに蓄積されたデータを、さまざまなシステム間で連携・活用するため、抽出・収集(Extract)、変換・加工(Transform)、配信・送出(Load)するツール
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