廃棄物処理業界では人手不足が課題であり、石坂産業株式会社の再資源化プラントでは、重機と作業員が同じヤードで連携して作業する際の接触事故のリスク低減や、粉じんの多い労働環境の改善が課題となっていた。
そうした中、日本電気株式会社(以下、NEC)と石坂産業は、再資源化処理を行う石坂産業のプラントにおいて、ローカル5GとAIを活用したスマートプラントの実証実験を、2022年10月~12月に実施した。なおこの実証には、インテル株式会社も参画している。
今回の実証では、ローカル5Gの高速・大容量・低遅延の特長を活かして、重機の稼働状況や廃棄物の処理量をリアルタイムで可視化し、作業効率の改善検討やリスクの把握を実施。また、重機の遠隔操縦の検証も行った。(トップ画)
具体的には、廃コンクリート処理プラント内に、インテルの「Xeon」プロセッサ搭載サーバを活用したローカル5Gの仮想化無線ネットワーク(vRAN)環境を構築し、作業エリアと重機に設置したカメラやセンサからリアルタイムにデータを収集した。
また、インテルCoreプロセッサ搭載パソコンを用いて、現場での作業状況の把握、作業データの数値化、作業安全性の確認に関する実証を行った。
重機の動きやピットの状況は、センシングを行うことで、ディスプレイ上に再現して可視化。リアルタイムに状況を判別することで、重機に無駄な動きがないか確認でき、改善ポイントの発見や業務効率化の検討に繋がったという。
作業状況の可視化には、重機やピットに設置したセンサにより数値化して分析した。
具体的には、主要業務(ホッパーによる廃棄物の投入)と間接業務(粉砕や積替え)の割合、廃棄物を荷下ろししてから再資源化処理するまでの作業推移と廃棄物の一次処理にかかる時間を可視化した。
これらにより、現場の目視でしか把握できなかった作業状況を定量化でき、1時間における廃棄物の投入量・投入平均回数や粉砕時間などを把握することで、作業効率の改善施策の検討に繋がったという。
現場リスクの可視化には、プラント内の危険区域に接近した人物を映像解析AIで常時把握するともに、重機のエンジン状態をモニタリングした。
重機の遠隔操縦では、混合廃棄物処理プラント内に、インテル「Xeon」プロセッサ搭載サーバと無線技術を活用した重機の遠隔操縦環境を構築した。
具体的には、プラント内と重機に設置した8台のカメラ映像をインテルCoreプロセッサ搭載パソコンで処理し、NECのネットワーク予測・制御AIである適応遠隔操縦システムを活用することで、安定した遠隔操縦を実現した。
また、粉塵が多く、ベルトコンベアなどの機器が複雑に設置されたプラント内環境のローカル5G電波環境の情報も収集した。
入り組んだ場所での無線状況を把握することで、さらなる利用エリアの拡大や新たな用途での効率化・省人化の実現に向けて、多くの知見を得られたという。
NECと石坂産業は今後も、石坂産業のスマートプラント化の促進に向けて、様々な実証を進めていくとしている。
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