自動車業界では、近年、車載情報制御系システムを中心として、ソフトウェアの大規模化が進み、抜本的な開発の効率化が求められている。
しかし、自動車のソフトウェア開発において、自動車メーカと自動車部品メーカのやり取りは、人の手で文章や図表を記載した仕様書を用いており、記述のあいまいさや不足などから、不具合や設計のやり直しなどが発生する可能性があった。
そうした中、パナソニック オートモーティブシステムズ株式会社とマツダ株式会社は共創し、自動車のソフトウェア開発の新プロセスを確立。開発工数の大幅な削減に成功したことを発表した。
この新プロセスは、マツダの国内向け「MAZDA CX-60」に搭載のコネクティビティマスタユニット(車載情報制御系システム)の一部に適用されている。
今回発表された新プロセスは、従来は実機で行っていた開発を、シミュレーションで検証するMBD(Model-Based Development、モデルベース開発)の手法で実現している。
MBDには、実機の試作にかかるコストや人員数、開発期間の削減といったメリットに加えて、シミュレーションで構成するモデルをさまざまに組み替えてアイデアを試せるなどのメリットがある。
具体的には、文章や図表で記載された従来の仕様書のやり取りではなく、仕様の振る舞いをシミュレーション可能な電子データを仕様書とする「モデル」でのやり取りによる開発を行った。
個社で開発効率化を図るだけでなく、自動車メーカの要求仕様の定義から、自動車部品メーカにおける詳細な設計段階での設計、商用ソフトウェアへの自動コード生成までを、共同で、一気通貫で実施するための開発プロセスを策定した。
モデル化により、従来の課題である、あいまいさを排除した仕様の記述や設計段階でのシミュレーション検証が、両社間にまたがって実施可能となる。
一連の取り組みにより、設計の手戻りを回避し、開発工数を2割程度削減できる見通しだという。
開発プロセスの適用範囲の拡大により、両社はそれぞれ、さらなる開発効率化を目指すとともに、MBD推進センターなどと連携し、他自動車メーカー、自動車部品メーカー、ツールベンダーなどを巻き込んだ、業界における標準化活動を推進していくとしている。
開発の詳細(トップ画参照)
①マツダ:要求仕様をモデルで設計・検証し、要求モデルとして自動車部品メーカー(パナソニック オートモーティブほか)に提示
②パナソニック オートモーティブ:マツダから要求モデルを入手し、自社開発ツールでモデル変換・検証
③パナソニック オートモーティブ:モデルの詳細設計・自動ソフトウェアコード生成
上記の開発をサポートする共通基盤として、下記の2点を構築している。
- マツダ側のツールとパナソニック オートモーティブ側のツールとの間で、互換性を保証した状態でモデルをやり取りするための共通仕様書(モデル交換仕様書)の策定と両社での共通ガイドライン化
- 開発中のモデルを相互接続し設計検証可能なシミュレーション環境(共有検証ゾーン)
マツダは、要求仕様をモデルで設計する際に、モデル交換仕様書に記載されたガイドラインにしたがって記載し、パナソニック オートモーティブが使用するツールでの動作を保証する。
パナソニック オートモーティブは、実物で動作するようにモデルの詳細設計を実施するとともに、その設計段階で、共有シミュレーション環境を用いて検証する。これらの活動により、会社間にまたがる開発の手戻りを抑止し、高品質のソフトウェア開発を目指す。
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