ハノーバーメッセ2023レポートの第三弾は、オムロンのブースだ。
工場ライン全体へのサービス提供で、完全自動化を目指す
オムロンのブースでは、大きく三つのゾーンに分けて展示がされていた。
一つ目が、製造現場の完全な自動化へ向けた「人を超える自動化」だ。
ここでは、モバイルロボットを活用した、フレキシブルな生産ラインのデモが展示されていた。
需要変動や変種変量に対応するべく、レイアウトを自由に変えたり、プロセスの順番を変えたりといったことが柔軟にできる生産ラインになっている。特にサプライチェーンや製造現場のレジリエンスなどに適応することを目指しているのだという。
オムロンでは以前からアームロボットや搬送機を活用した展示がされていたが、新たにアームロボットを標準品として提供することで、スムーズな生産ライン構築を実現している。
また、必要なアプリケーションがほしいというニーズに対応するべくソフトウェア開発を進めているほか、ロボット部品のラインナップも増えている。
さらに、MES(製造実行システム)などの上位システムともつながることができるという展示だ。
こうした変種変量に対応するソリューションは各社開発が進んでいる中、オムロンの強みは、ロボットやソフトウェア単体での提供ではなく、ライン全体において必要なコンポーネントやアプリケーションをサービスとして提供できる実行力なのだという。
要件定義を行う際にも、オムロンが展開する共創拠点で、実際に展示物を見てもらいながら課題を具体化し、検証している。
ロボットやデジタル技術が人をサポートして協調する
二つ目が、機械を活用して人の作業をアシストすることで、働きやすさや生産性の向上を図る「人と機械の協調」だ。
展示されているデモでは、人とアームロボットが並んで作業をしている。また、プロジェクターが部品をどこに置けばいいのかといったナビゲート情報を映し出し、人の作業が間違っていないかも機械がチェックしている。
このように作業者をナビゲートすることにより、人の入れ替わりが激しい現場においても、生産性を向上させるという取組だ。
なおこのデモは、実際にオムロンのオランダ工場で活用されているものを元に構築されているのだという。
デモではわかり易くするために単純な作業を行なっているが、複雑な組み立てなどでは、手順や扱う部品の数が多い。そこで、こうしたシステムを活用することで、熟練者ではなくても品質を保ちながら作業を実行することができるということだ。
パートナー企業と協業しながら実現する「デジタルエンジニアリング革新」
三つ目が、デジタル技術を活用し、生産や設計、保守などの効率を上げて、生産性の高い製造現場の実現する「デジタルエンジニアリング革新」だ。
ここでは、ダッソー・システムズと共同でのデモが展示されていた。例えば、ロボットを一つ増やす場合や、工程を変える際には、いきなり現場を変えるのではなく、仮想環境でシミュレーションする。
デジタルツイン上でロボットを追加したり、人の位置を変えたりすることで、生産性の変化などをあらかじめ確認することができるのだ。
今後は、シミュレーションで確認した変更点を現実の現場に落とし込んでいくため、事前検証を行っているのだという。
工場全体のシミュレーションは、一社だけで行うには限界がある。そこで、ダッソー・システムズをはじめ、様々なパートナー企業とともに共同のデモを開発しながら、提案をすすめるということだ。
製品や技術を集約した展示物で、課題解決のイメージを伝える
他にも、以前も取材した、ボトルに液体を充填する展示もされていた。
展示物の見た目としては以前とほとんど同じだが、以前はオムロンのAIコントローラを紹介するための展示物であったのに対し、今回はAIコントローラを含めセンサやソフトウェアなど、オムロンのデータ活用サービス「i-BELT」の一環として展示されている。
今回のオムロンブースでは、この展示物に象徴されるように、様々なオムロン製品や技術が搭載されているにもかかわらず、PLCやセンサーなどといった製品単体の展示物がなかったのが印象的だった。
これは、あくまでもソリューション全体像を見た上で、必要な製品や技術を組み合わせていくという、考え方を重要視しているからなのだ。
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IoTNEWS代表
1973年生まれ。株式会社アールジーン代表取締役。
フジテレビ Live News α コメンテーター。J-WAVE TOKYO MORNING RADIO 記事解説。など。
大阪大学でニューロコンピューティングを学び、アクセンチュアなどのグローバルコンサルティングファームより現職。
著書に、「2時間でわかる図解IoTビジネス入門(あさ出版)」「顧客ともっとつながる(日経BP)」、YouTubeチャンネルに「小泉耕二の未来大学」がある。