アドバンテックは、産業用PCをはじめ、組込ソリューションやネットワーク機器などの産業用デバイスの開発・製造・販売を行なっており、WISE-PaaSと呼ばれるIoTプラットフォームなども提供している企業だ。
2019年には、福岡県直方市にあるオムロン直方をグループ会社化し、「アドバンテックジャパンサービスセンター直方」を開設。日本国内で販売するアドバンテック商材を海外拠点から集約し、製品の検査や品質対応、ロジスティクスなどに対応している。
今回は、実際に「アドバンテックジャパンサービスセンター直方」に足を運び、ここで作られているアドバンテック製品の製造工程や、工場のスマート化について取材した内容をレポートする。(聞き手:IoTNEWS小泉耕二)
「アドバンテックジャパンサービスセンター直方」の概要
「アドバンテックジャパンサービスセンター直方」の前身であるオムロン直方時代は、顧客の要望に応じた専用仕様での電子機器製造受託や、開発の受託を行っていた。そのプロセスはそのままに、アドバンテックの標準商材のサービスをサポートする部隊が動員されている。
1階は部品の倉庫と、アドバンテック製品を組み合わせるカスタム製造(Configured To Order Service(CTOS))を行なっており、2階ではPCBの生産から検査までを一環で行っている。
2階のPCBの生産工程は見学可能。PCBをつくるための「アートワーク設計」「製品立ち上げ」「生産技術・工程設計」「PCB製造」「品質管理」といった部門ごとの仕事内容や想いが描かれたパネルの紹介や、PCB機械実装工程と手組み工程のこまかなフロー図が展示されていた。

また、工場のスマート化への取り組みについても、概要が紹介されている。

アドバンテック製の様々なセンサを製造工程の各所に取り付け、振動や電力、画像や温湿度などをサーバに収集。それらのデータを現場改善に活用できる情報として、ダッシュボードにて提示している。
工場のスマート化へ向けた取り組み
ここからは、工場のスマート化へ向けた具体的な取り組みについて紹介する。
作業者の移動データを収集して効率化を図る
一つ目は、作業者の移動データを収集して分析する取り組みだ。
作業者の移動データを分析するため、RTLS(Real Time Location System)というデバイスを作業者に持ってもらい、人の動きがわかるようにしている。

これにより、効率的に動いている人が一目でわかり、その動きを真似することでさらなる効率化を実現している。

2つのアプローチで取組む設備の稼働状況監視
二つ目が、設備の稼働監視だ。
設備に振動センサを取り付けることで、稼働状態を常に監視している。

センサからのデータは収集され、ダッシュボードにて設備ごとの稼働率や機械のエラー情報、ラインの稼働率などを見ることができる。

こうした情報をもとに、改善活動をすぐ取り組める環境が構築されている。
さらに、ラインに設置されている積層信号灯を、画像解析して状態を監視する実証実験もこの工場内で行われている。

現状は前述したとおり、設備にひとつひとつセンサを取り付けてデータを収集しているが、画像によるデータ収集であれば、より効率化をはかることが可能となる。
加えて、ここで活用されているエッジコンピュータ「Advantech Ei-52」には、顔認証や物体認証も搭載されているため、積層信号灯が赤く点灯してエラーを通知した際に、どれくらいの時間で、誰が改善活動を行ったかも把握することができる。

環境負荷低減へ向け、工場のスマート化を発展させていく
今後は、現場改善のためのスマート化だけでなく、EMS(エネルギーマネジメントシステム)の構築にも力を入れていくのだという。
例えば、ラインの稼働状態や作業者の状態などのデータを、製造プロセスで排出された温室効果ガスをCO₂に換算した「カーボンフットプリント」算出のための元データにするなど、さらなるスマート化を目指す計画だ。
工場のスマート化やEMS構築を検討しているのであれば、是非実際に足を運んで参考にしてみて欲しい。
無料メルマガ会員に登録しませんか?

現在、デジタルをビジネスに取り込むことで生まれる価値について研究中。IoTに関する様々な情報を取材し、皆様にお届けいたします。