樫山工業は、1946年の創立以来、真空技術を強みに、半導体や液晶パネルの製造工程で使われる、ドライ真空ポンプを主製品として製造・販売している。
パンデミック以降の巣ごもり需要や半導体の需要増加に伴い、同社のドライ真空ポンプの需要も国内外で増加。2023年5月には工場の増強も行われている。
そうした中、サプライチェーンにおける設計・調達領域の属人化や原価ブレなどの課題があったのだという。そこで、以前より図面管理システムの導入を行っていたが、さらなる図面データ活用を目指し、キャディ株式会社の図面データ活用クラウドサービス「CADDi DRAWER」の導入に至った。
本稿では、「CADDi DRAWER」の導入に至った背景や導入効果、今後「CADDi DRAWER」に求める機能などについて、樫山工業株式会社 生産統括本部 調達部 副部長 仲谷功太郎氏(トップ画左)、主任 原京平氏(トップ画右)にお話を伺った。(聞き手: IoTNEWS小泉耕二)
多品種少量生産の現場で感じる「CADDi DRAWER」の効果
IoTNEWS 小泉耕二(以下、小泉): 「CADDi DRAWER」は、図面データを解析した上で蓄積することで、必要な図面を類似検索やキーワード検索などで検索することができるサービスですが、どのような課題感から導入に至ったのでしょうか。
樫山工業 原京平氏(以下、原): 弊社はお客様に寄り添ったものづくりをしており、多品種少量生産を行っています。
そうした中、図面をデータ化してシステムに保管してはいたのですが、似たような図面があるにも関わらず、新しい図面を作成してしまうことも多々ありました。
新しい図面に対して部品を発注する際も、どこのサプライヤーに発注するべきかを経験がある担当者に聞いていたため、毎回担当者に確認する必要が生まれるほか、適正なサプライヤーに発注できているのかが分からないなどの課題がありました。
また、新しい図面が増えることで部品点数も増えるため、部品点数の削減にも取り組んでいきたいと思っていました。
こうした脱属人化や原価低減、業務の効率化を目指す中で、「CADDi DRAWER」を見つけ、トライアルを行いました。トライアルの結果、手応えを感じて導入に至りました。
小泉: トライアルで感じた手応えはどのようなポイントだったのでしょうか。
原: 一番は類似図面の検索ができる点です。
これまでは、材質や図面番号などから探したり、担当者に聞いたりしながら探していたため、「過去の図面を探す」という業務は大変なものでした。
「CADDi DRAWER」の類似図面検索機能により、似た図面を瞬時に探せるというのは、実務者の私にとって非常に便利な機能だと感じました。
また、製造現場では材質の処理や図面番号を把握していないケースもあり、図面を探すのはさらに大変です。
「CADDi DRAWER」であれば、図面上に書いてあるキーワードでも検索することができるので、これまでの半分以下の時間で目的の図面にたどり着くことができるようになりました。
様々な部署のニーズから図面検索が行えるメリット
小泉: 現在社内では、どれくらいの方々が「CADDi DRAWER」を活用されているのでしょうか。
原: 導入当初は調達部と技術開発部の一部でトライアルを開始し、現在では製造部や品質保証部など、5部署にわたって50名ほどが利用しています。
小泉: 様々な角度から図面を探しているのですね。
原: そうですね。図面を探す目的がそれぞれの部署で違うので、部署ごとの検索方法で目的の図面を検索できるのは嬉しいポイントです。
小泉: 具体的にはどのような目的で図面を検索しているのでしょうか。
原: 例えば設計の場合、新しく図面を作る際には過去の図面を探し、それを参考にしながら設計を行います。こうした参考図面を探す際には、これまでは経験者に聞きながら、検索と確認を何度も繰り返していたため時間がかかっていました。
そこで「CADDi DRAWER」でキーワード検索や類似図面検索を活用することにより、業務の効率化を図れるようになりました。
調達の場合は、新しい図面の部品を手配する際に、図面を管理するシステムと受発注を管理するシステムの両方の情報を見比べた上で、さらに経験者に確認をとって調達を行っていました。
経験者それぞれの判断のもと、似たような図面のものでも別々のサプライヤーに発注していたり、その後も適正でない発注先であるにも関わらず、リピート発注し続けていたりといったケースもありました。
そこで、新しい部品を調達する際に、「CADDi DRAWER」で類似検索をすることで、似ている部品を作っているサプライヤーの過去の実績や価格、得意とする領域を比較しながら、適正な発注を行うことができるようになりました。
これにより、業務効率や原価低減につながり、部品によっては20%以上のコストダウンを実現しました。
さらに、同じような図面は「CADDi DRAWER」で一元化されるため、統合できるものは標準化することで、図面数や部品点数削減にもつながっています。
また、品質保証部であれば、仮に部品の不具合があった場合、不具合があった部品と似ている図面を探すことで、不良の波及性を確認し、同じような不良が発生する可能性がある部品に関しては、あらかじめ対策を講じることができるようになりました。
要望に対する迅速な対応で、新たな活用の幅を広げる
小泉: 今後、「CADDi DRAWER」に追加してほしい機能などはありますか。
樫山工業 仲谷功太郎氏(以下、仲谷): すでに定期的なミーティングを通じて要望を伝えており、実際にご対応いただいています。
現在、相談しているものでいうと、サプライヤー情報に関する機能です。
サプライヤーの評価に関しては、現在別のツールで管理していますが、「CADDi DRAWER」では図面とサプライヤー情報が紐づいているので、この情報を管理したり活用したりすることができないかと相談しています。
小泉: 今後はCO2の排出量もサプライチェーンの中で抑えていかなければならないなど、管理する情報は増えていくことが予測されます。こうした情報が、図面とサプライヤー情報が紐づいている「CADDi DRAWER」に追加されればさらに便利になると感じました。
原: そうですね。ミーティングでの要望に応えていただき、どんどん機能改修をされているので、今後さらに新たな活用方法が生まれていく気運を感じています。
小泉: 御社を始め、様々な企業の意見を聞きながら、短期間で機能アップしているということですね。クラウドサービスということもあって、今後さらに面白いサービスになっていくのだと感じました。
仲谷: 現在「CADDi DRAWER」を導入して半年ほどですが、図面を効率的に探したり、適切なサプライヤーを見つけたりすることにより、効率化や原価低減、脱属人化につながっています。
今後は、部品の標準化やサプライヤー管理など、活用の幅がさらに広がるのではと期待しています。
小泉: 本日は貴重なお話をありがとうございました。
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現在、デジタルをビジネスに取り込むことで生まれる価値について研究中。IoTに関する様々な情報を取材し、皆様にお届けいたします。